日光周辺
日光周辺

20244月  ウスベニニリンソウ  キンポウゲ科 イチリンソウ属

ニリンソウを知っている方は多いかもしれませんが、ウスベニニリンソウはあまり知られていないかもしれませんね。ニリンソウの白い花弁に見えるものは花弁ではなく萼片です。萼片の外側(裏側)がピンク色に染まっているものはよく見かけますが、表側にもピンク色が入っているものはウスベニニリンソウと呼ばれニリンソウの品種になります。また緑色になるものもあり、こちらはミドリニリンソウと呼ばれる品種です。どちらもなかなか出会えないですね。群落の中からピンクや緑のニリンソウを探すのも楽しいものです。画像のウスベニニリンソウは日光に行った時群落の中にウスベニニリンソウが固まって咲いているのを見つけ撮影したものです。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20243月②  エイザンスミレ  スミレ科  スミレ属

高尾山は花の名山、そしてスミレの山としても有名です。高尾山周辺で観られるスミレは亜種、変種、品種、交雑種を含めると40種類以上観られると思います。その中で今回トップページに採用したのはエイザンスミレです。エイザンスミレは山野の日当たりの良い場所から半日陰に生えています。特徴は何といっても葉の形。深く切れ込んだ葉はスミレとは思えないような形をしています。花色は薄くピンクがかった色が多く、また花弁が少し波打つのも特徴と言えます。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20243月  アブラチャン  クロモジ属

高尾山周辺ではポピュラーな樹木で、特に渓流沿いで必ずと言ってよいほどよく出会う樹木です。樹高は大きくても5mほどで株立ちしているものが多く見られます。高尾山では同科同属のダンコウバイが先に咲きそれに次いでアブラチャンが咲き始めます。アブラチャンは比較的湿潤な山道脇や前述のとおり渓流沿いに自生するのに対しダンコウバイは山地の比較的乾いた場所に自生しているように思います。両方とも葉に先だって花をつけ花の色や形が遠目で見るとそっくりですが、見分けのポイントはアブラチャンの花には短い花柄がありますが、ダンコウバイには花柄がありません。ただ葉を見ればその違いは一目瞭然です。

 

高尾山野草園
高尾山野草園

2024年2月③   マンサク  マンサク科  マンサク属

マンサクは日本の固有種。名前の由来は諸説あるようです。その一つは他の木に先駆けて“まず咲く”ことからマンサク、花をたくさんつけることによる“豊年満作”などの由来があります。花の形は一度見たら忘れないとてもユニークな形をしています。黄色いリボン状のものが花弁で4個あり、基部の赤っぽい部分は萼片でこちらも4個です。まだ寒いこの時期昆虫の種類は少なくアブやハエを頼っているのではと思われます。画像でわかるとおり前日に降った雨が夜に雪に変わったようで花の上に湿った雪が積もっていました。花弁がリボン状なので雪が落ちやすい構造ではないかと思われます。  

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20242月②  オオバアサガラ  エゴノキ科  アサガラ属

オオバアサガラは初夏にとても美しい線香花火のような白い花をつけます。奥多摩の渓流沿いではごく当たり前に見ることができますが、高尾山周辺で出会った個体はとても少なく、知っている限りでは3本ほどしかありません。その内の一本が数年前に伐採されてしまったのですが、切り株から萌芽したのか同じ場所に復活しているのが確認できました。遠目に見慣れないシルエットの樹木が見え望遠鏡で観察しオオバアサガラと判断しました。頂芽の芽鱗が剥がれかかっているのが確認できます。この後裸芽状態になるのが特徴で維管束痕の形はアルファベットの“U”もしくは“V”の字状で浮き出て見えるのも特徴です。初夏に花が咲くかどうか今から楽しみです!

 

小石川植物園
小石川植物園

20242月    ハンノキ   カバノキ科  ハンノキ属

ハンノキは水辺の湿った所を好みます。谷戸の田んぼの周りでは欠かせない樹木です。それは稲を干す稲架(はさ)の支柱として利用される重要な樹木だったからです。ハンノキは落葉樹ですのでこの時期は葉がありませんが、前年の果実の残りがついていることが多いので見分けはしやすいですね。そして寒いこの時期展葉に先だって花を咲かせるのも大きな特徴です。花??どれが花??と思われるかもしれませんが、これがハンノキの花です。ヒモ状に垂れ下がっているのが雄花で赤く見えるのが雌花です。ハンノキは風媒花で雄花が先に熟す雄性先熟の種です。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20241月②    ネムノキ   マメ科  ネムノキ属

1月も下旬になるとロウバイや早咲きのウメなどが咲き始めます。とはいえこの時期の観察会では照葉樹やシダ類、冬芽が中心となります。落葉樹が葉を落とすと何も観るものが無いと思われる方が多いかもしれませんが、葉がなくても冬芽はしっかりと名前を名乗ってくれています。種類によっては葉よりも冬芽の方が分かりやすい種もあるほどです。冬芽の見分けのポイントはいくつかありますが、頂芽や側芽、葉痕の形や短枝の有無などで見分けることが多いと思われます。トップ画像のネムノキは葉痕に大きな特徴がありますので比較的わかりやすい種だと思います。ただちょっと他の種と葉痕の雰囲気が違うように見えます。それは側芽が見えないことです。ネムノキの冬芽は葉痕の中に埋もれているため見えません。芽吹くときはこの葉痕に裂け目が入り新しい芽が出てきます。このような冬芽は“陰芽(いんが)”と呼ばれます。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20241月    コクサギ   ミカン科  コクサギ属

20年ほど前になりますが、コクサギに出会うと「沢や渓流に近づいているんだよ」と森林インストラクターの先輩から教わった記憶があります。コクサギは林内の湿った所に自生します。渓流脇の林道でたくさんのコクサギに出会えるのはそのためですね。葉は“コクサギ型葉序”と呼ばれ2枚ずつつく互生です。観察会で参加者にこの葉を揉んでいただき、この香りが好きかどうか尋ねるとほぼ半々に別れるように思います。独特な香りですが個人的には好むとまではいかずとも嫌いな香りではありません。今回はちょうど裂開した果実に出会えたのでトップページで紹介させていただきました。中に種子が見えその外側に内果皮が見えます。果実が乾燥するとこの内果皮がバネの役割を果たし種子を遠くへ飛ばす自動散布型の代表的な種です。仲間内では「コクサギの二段ロケット」と呼んでいます。どうしてそのような呼び名があるのかは、動画を見ない限りその仕組みはなかなか理解できないかもしれませんね。飛ばす力は想像以上で弾けるとパチッと音がして種を数メートル飛ばすほどですので、決して目を近づけてじっくり観察してはいけません。大変危険です!

 

三頭山
三頭山

202312月   ホソエカエデ   ムクロジ科  カエデ属

                   (旧体系:カエデ科)

APG分類体系ではカエデ科がムクロジ科に含まれカエデ科はなくなってしまいました。現在ネットでは新旧の分類体系が混在しています。森林インストラクターの資格を取得して間もない頃、ニレ三兄弟と教えていただいたケヤキ、ムクノキ、エノキはAPGでは別れ別れになり、ニレ科に残ったのはケヤキだけ!ムクノキとエノキはなんとアサ科に含まれてしまい、正直頭が混乱しております!

話は戻り、今回のホソエカエデを観たのは三頭山です。三頭山にはたくさんのカエデ類が自生していて、178種類観ることができるようです。以前カエデを覚えようと三頭山へ行き、16種類確認しています。ホソエカエデの形に似ているカエデはウリハダカエデ、テツカエデ、アサノハカエデ、そしてウリカエデも見分けるのに厄介な場合があります。自生のカエデ類は図鑑どおりではない個体が多いため結構覚えるのが大変です!ホソエカエデは別名ホソエウリハダ、アシボソウリノキと呼ばれているそうです。

 

奥高尾周辺
奥高尾周辺

202311月②   ツクバネ   ビャクダン科  ツクバネ属

丘陵や林内の痩せて乾いた場所に自生しますが個体数はあまり多いようには思えません。この個体は尾根筋の乾いた狭い登山道脇で出会いました。ツクバネは光合成をしますが宿主から栄養を吸収する半寄生植物です。果実は球形でプロペラのように見えるのは4枚の苞です。この苞で風に乗って運ばれ散布される仕組みですね。若葉はおひたしで、種子は煎って食べられるそうです。名前の由来は見た通り、羽根つきの“衝羽根”そのものです。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

202311月   オヤマボクチ   キク科  ヤマボクチ属

オヤマボクチはキク科の多年草。頭花が45cmととても大きく丈も11.5m、総苞は球形でクモ毛があります。地方では“ウラジロ”とも呼ばれているそうで、葉裏に和紙のような手触りのフワフワとした白い繊維があり、その昔火おこしの時の“火口(ほくち)”として用いられたためその名があります。

また、根は“ヤマゴボウ”と呼ばれ山菜として食べられます。先だって高尾山の漬物屋さんでこのヤマゴボウの味噌漬けを購入し食したところなかなか美味でした!ただヤマゴボウという植物は別にあり、こちらはヤマゴボウ科ヤマゴボウ属で全く別種です。またこちらの根は有毒で中毒事故が絶えないそうです。長野県ではお蕎麦のつなぎにオヤマボクチの葉の繊維が使われているそうで、機会があればこちらも是非食してみたいと思っています。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2023年10月③  セキヤノアキチョウジ   シソ科  ヤマハッカ属

林内のやや明るい所や林縁に自生しています。花の筒部が長くとてもユニークな形ですので覚えやすい種だと思われます。花の色は薄い青紫色から濃い色まで幅があるように思います。一株にたくさんの花をつけとても見応えがありますが、花期が短いのか登山道でまだ美しい花がたくさん落ちているのをよく見かけます。

「関屋の秋丁字」、名前の由来は“関屋”は“箱根の関所”、“丁字”は花の形が“丁の字”に似ていることから、「箱根産の秋丁字」の意。日本の固有種だそうで名付け親は牧野富太郎博士です。

中部地方の岐阜県より西には「アキチョウジ」が自生しているそうです。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

202310月②  タカオヒゴタイ   キク科  トウヒレン属

高尾山には“タカオ”と冠のつく植物がいくつかあります。タカオイノデ、タカオコバノガマズミ、タカオシケチシダ、タカオスゲ、タカオスミレ、タカオヒゴタイ、タカオフウロ、タカオホオズキ、タカオホロシ、タカオヤブマオ、タカオワニグチソウがあるそうです。(菱山忠三郎著/高尾山花と木の図鑑より)今まで高尾山には相当通っていますが、この中で出会ったことがあるのは、タカオスミレ、タカオフウロとこのタカオヒゴタイくらいです。その他は同定ができないというのが正直なところです。牧野富太郎先生のようにパッと見た瞬間に今まで観たものと何か違う、そのような域に達しないと分からないのかもしれませんね。その他高尾山で最初に発見されて命名された植物が前述の種も入れて63種あるそうです。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

202310月   シモバシラ   シソ科  シモバシラ属

シモバシラはとても美しい花を咲かせるのに、花よりも冬の風物詩の一つとなっている氷華の方が有名かもしれません。シモバシラ=氷華というイメージですね。冬地上茎が枯れても地下の根は生きているため冬でも水を吸い上げています。枯れた茎に沿って地際に染み出た水が凛と冷えた朝に氷り、その姿が花のように見えるため高尾山ではハイカーにとても人気です。シモバシラは美しい姿の花になかなか出会えないという声をよく聞きます。氷華の方が有名なのはそのためかもしれませんね。

 

水元公園周辺
水元公園周辺

20239月③   ミズネコノオ   シソ科  ミズトラノオ属

花の姿が一見同科のカワミドリに似ていますが、カワミドリは湿り気のある日当たりのよい場所に自生し、ミズネコノオは水の綺麗な水深の浅い湿地に自生しています。

オカトラノオは毎年観ていますが初めて聞く名前に興味がそそられすぐに観に行きました。穂状花序に小さな淡いピンク色の花をつけていますが、よく見ないと咲いているのかどうか分からないほどの大きさです。それもそのはず花冠は約2mmほどだそうです。それにしても厄介な名前のように思えてなりません。この仲間にはミズトラノオがあり、似たような名前は他にオカトラノオ、ヌマトラノオ、ノジヌマトラノオ、イヌヌマトラノオその上これらの交雑種もあるそうです。ただミズネコノオとミズトラノオはシソ科で、その他はサクラソウ科ですので全く別種となります。本当にややこしいですね。

環境省のカテゴリーではミズネコノオは準絶滅危惧(NT)に指定されており、東京都では最も危惧度の高い希少な湿生植物の一種となっています。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20239月②   ネナシカズラ   ヒルガオ科  ネナシカズラ属

日当たりの良い法面でクズに覆いかぶさっているネナシカズラを見つけました。

ネナシカズラは寄生植物で寄生に成功すると根は枯れ寄主から栄養をもらって育ちます。寄生植物とは、他の植物から栄養を得て生きる植物を指し、自分でも光合成をする半寄生植物と全て栄養を横取りする完全寄生に分けられ、ネナシカズラは後者の完全寄生植物です。よく似ている仲間に“アメリカネナシカズラ”がありますが、画像は茎に紫色の斑が見え、花冠筒部が長く花冠から雄しべが飛び出ていないのでネナシカズラですね。アメリカネナシカズラは花冠筒部が短いため、雄しべが花冠から飛び出ています。また画像ではよく見えませんが、本種の花柱は一つですが、アメリカネナシカズラは二つありますので見分けのポイントになります。最近判明した研究結果ではネナシカズラは匂いを手掛かりにして自分に合う寄生相手を見つけることが分かったそうです。これは“根も葉もない”事実だそうです!

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20239月   ナンテンハギ   マメ科  ソラマメ属

開けた日当たりのよい高尾山の林道を歩くと青紫色のいかにもマメ科らしい花が目に入ってきます。ナンテンハギの花期は6月から10月と長いため出会っている方は多いのではと思われます。ただ同属の“ミヤマタニワタシ”が同じような環境に自生しています。花期は6月から8月ですので見分けが必要になります。見分けのポイントは茎の曲がり具合や葉で、ナンテンハギの茎はほぼ真っすぐ、ミヤマタニワタシは稲妻型に曲がりますがどちらも図鑑どおりではないタイプもあります。またナンテンハギの葉の縁には鋸歯は無くうっすらと毛が確認できます。一方ミヤマタニワタシの葉の縁は波打ち鋸歯があります。もう9月に入りましたので、ミヤマタニワタシの個体数は少なくなってきていると思いますので、見分けを確認されたい方はお急ぎください!

あとナンテンハギは別名フタバハギとも呼ばれています。

 

入笠山
入笠山

20238月②   コウリンカ   キク科  コウリンカ属

8月亜高山帯の高原で目を引く花はたくさんありますが、その中でオレンジ色の花は

とても目立ち、また舌状花が垂れさがる姿がとてもユニークなので覚えやすい種の一つではないでしょうか。

自然界でオレンジ色の花はそう多くないと思いますが、少し標高の高いフィールドではフシグロセンノウもオレンジ色で遠目にもすぐわかります。コウリンカは“紅輪花”の意で、紅色の舌状花を車輪に見立てその名があります。コウリンカは環境省のカテゴリーでは絶滅危惧Ⅱ類に入っています。

 

御岳山
御岳山

20238月   ソバナ   キキョウ科  ツリガネニンジン属

御岳山で綺麗な色のソバナと出会いました。同時期に咲くツリガネニンジンに似ていますが、違いのポイントを覚えれば遠目でもわかるようになります。ポイントは葉のつき方です。

ソバナの茎葉は互生。ツリガネニンジンは輪生に葉がつきます。他にソバナの柱頭は花冠から出ず、ツリガネニンジンは出るなどもポイントになります。ただこちらは微妙なものも結構ありますので、葉のつき方で見分けるのが一番簡単かと思います。

花の色が白いものはシロソバナと呼ばれ品種になります。

 

尾瀬ヶ原
尾瀬ヶ原

20237月③  クロビイタヤ  ムクロジ科  カエデ属

日本固有種。5つに切れ込んだ葉がとても美しいカエデで、北海道大学植物園のシンボルマークで知られているカエデです。別名ミヤベカエデといい北大植物園の初代園長の宮部金吾氏が日高地方を調査した時に発見されたためその名があります。画像のクロビイタヤに出会ったのは尾瀬ヶ原。適地は河川に沿った湿った土地だそうで、尾瀬ヶ原の拠水林で出会いましたのでまさに適地と言えます。自生地は北海道南部から青森、秋田、岩手、福島、群馬、長野に隔離分布するとても珍しいカエデで、環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)にランクされています。

クロビイタヤは黒皮板屋と書き、樹皮が黒っぽいのでその名があります。

 

新潟県南魚沼市十字峡
新潟県南魚沼市十字峡

20237月②   アクシバ  ツツジ科  スノキ属

この花の形、まるでウリノキの花と勘違いしてしまいそうです。でも花弁に色がついているし葉の形が全く違います。この花はアクシバといい、初見でした。ウリノキはミズキ科(旧体系はウリノキ科)ウリノキ属でアクシバはツツジ科スノキ属ですので全く違う科です。他人の空似というところですが、収斂(しゅうれん)進化なのでしょうか?

出会ったのは新潟県の十字峡の少し湿り気のある遊歩道沿いです。花の大きさはウリノキよりも一回りほど小さく花弁をクルクル巻き上げて下向きに咲く姿はウリノキにそっくりです。

果実は液果で熟すと赤くなり食べられるそうです。スノキ属にはお馴染みのブルーベリーがあります。

 

武蔵五日市周辺
武蔵五日市周辺

20237月   カリガネソウ  シソ科  カリガネソウ属

何ともユニークな花の形をしています。上から覆いかぶさるように出ているのは途中まで合着した雄しべ4本と1本の雌しべです。カリガネソウは雄しべ、雌しべが露出していますが、同じ科のウツボグサやキバナアキギリのように外からは見えない構造のものなど、シソ科は多様な形の花が多いように思います。

ではこの湾曲したと長い雄しべと雌しべ、どうやって花粉の受け渡しをしているのか?またどんな昆虫を待っているのか気になりませんか?どうやら下側の花弁にある蜜標に誘われてハナバチなどが入り奥へと進むと重さで花弁が動いて雄しべ、雌しべがハナバチなどの昆虫の背中に近づき花粉をつけているようです。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20236月③   ヤブムラサキ  シソ科  ムラサキシキブ属

                   (旧体系:クマツヅラ科)

夏至に入りこの先梅雨が明けると一気に気温が上がってくる中、毛に覆われた冬支度をしているように見えるのはヤブムラサキです。葉を触るとフカフカで気持ちが良いので観察会ではいつも皆さんに触ってもらっています。仲間のムラサキシキブは毛がありませんので、見分けは比較的簡単なのです、、、が、最近全体に短い伏せた毛に覆われているものが観られます。これらは100%言い切れないのですが、どうやらムラサキシキブとヤブムラサキの自然交雑種イヌムラサキシキブではないかと思われます。画像のように全体がたくさんの星状毛に覆われているものがヤブムラサキですので、少し毛に覆われているものは交雑と疑うべきではないかと思います。

最後にこれがシソ科??APG分類体系で頭が混乱しそうです!

 

長野県入笠山
長野県入笠山

20236月②   キバナノアツモリソウ  ラン科  アツモリソウ属

なんとも奇妙な形状の花だと思いませんか?これ「食虫植物??」なんて脇を通ったハイカーから聞こえてきたくらいです。確かに大きな穴はそんな感じに見えても不思議ではありません。

でもこれは食虫植物ではなくれっきとした“ラン()”です。構造はちょっとわかりづらいかもしれませんが、上の緑色の葉のようなものが“苞”、苞の左側は“花柄子房”、白い屋根のようなものは“背萼片”、黒いまだら模様が入ったハの字状に開いているのが“側花弁”、白と黄色のベロのようなものは“仮雄蕊”、その裏側にマメのように見えるのが“葯と先端に花粉”、背中側にぴったりくっついて見える緑色の葉のようなものは2枚の萼片が合着した“合萼片”、そして大きな穴がある袋状のものは“唇弁”となり、この画像では確認できませんが、花粉塊の右奥(蕊柱の先端)に柱頭があります。媒介する昆虫はこの穴から入り蜜標に導かれて奥へと進みます。そして粘液質の花粉と柱頭の狭いスペースに体全体が挟まれますがそこを通らないと出られないため、その時に粘液質の花粉が背中についたり柱頭に粘液質の花粉をつけることになります。書いている本人がだんだん何を言っているのかわからなくなるような巧妙な形状をしています。そして蜜を出さない!だまし花!

ラン科は維管束植物の中で一番進化している形状だと言われています。

蘭の仲間はどれもとにかくユニークな形ばかりです。

 

山梨県乙女高原
山梨県乙女高原

20236月   イボタノキ  モクセイ科  イボタノキ属

イボタノキは里山でよく観られる落葉低木です。イボタノキの枝に白い蝋物質のようなものが付着しているのを見たことがある方もいらっしゃると思います。これはイボタロウムシというカイガラムシの仲間でその名のとおりイボタノキにつく蝋物質を分泌する虫、そのまんまのネーミングすね。この蠟物質はイボタ蝋や会津蝋と呼ばれかつては薬用や工業用に利用され栽培までされていたそうです。また身近なところでは襖の敷居に塗り付けて滑りをよくするために今も販売されています。花は5月から6月にかけて真っ白な筒状の合弁花をたくさんつけます。果実は熟すと黒色になり一見するとネズミモチに似ています。

亜高山帯などでは葉の先が尖る変種のミヤマイボタが自生しています。 

 

山梨県乙女高原
山梨県乙女高原

20235月②   サクラスミレ  スミレ科  スミレ属

花の大きさは交雑種を除くと日本最大と言われ、スミレの女王と呼ばれています。名前の由来は花弁の先端が少し凹んでいることと、あでやかな桜色をしているためその名があります。顔だけ見ると側弁の毛が多く花柱の先端が見えないのでアカネスミレに似ています。出会ったのは山梨県の亜高山帯の高原で、環境は日当たりの良い場所から落葉樹林の半日陰に点在していました。標高1,700メートルの高原で雪解け後一番

最初に開花するスミレです。高尾山周辺ではまず見ることがないと思われます。

この他落葉樹林帯ではミヤマスミレや日当たりの良い場所ではアケボノスミレ、湿気が多い場所ではニョイスミレが確認できました。サクラスミレで葉に濃紅紫色の斑が入っている種はチシオスミレ、花が白い種はシロバナサクラスミレと呼ばれそれぞれ品種となります。この先高原ではエイザンスミレやヒゴスミレ、エゾノタチツボスミレ、ヒナスミレと続々とスミレ類が開花します。 

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20235月   ワニグチソウ  クサスギカズラ科  アマドコロ属

                    (旧体系:ユリ科)

森林インストラクターになりたての頃この花になかなか出会えず、数年経ってからようやく出会うことができた思いで深い花の一つです。ホウチャクソウ、ナルコユリ、ミヤマナルコユリ、アマドコロとは結構出会えるのですが、ようやく出会えた時の喜びは一入でした。高尾山にはタカオワニグチソウが自生していることは図鑑などで知っているのですが、まだ出会ったことがなく、この先も探し続けて行きたいと思います。

タカオワニグチソウはワニグチソウとナルコユリの交雑種と言われています。 

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20234月③   アオバナアオキ  アオキ科  アオキ属

                    (旧体系:ミズキ科)

2月のトップページで品種のキミノアオキをご紹介した折、合わせて説明させていただきました花が青い(緑)アオバナアオキを今回トップページの画像に採用しました。探せば結構見つかるかも、、、とお伝えした通り、今月高尾山周辺を歩くと結構見つけることができましたが、みなさんは出会えましたでしょうか?

アオキは雌雄異株(別種)ですので、画像のアオバナアオキは雄しべが見えるため雄花ですね。

もし雌花で冬になり結実した後何色の実になるのか・・・?!可能であれば同じ個体を追って確認するのも面白いかもしれません。 

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20234月②   ヤマブキソウ  ケシ科  ヤマブキソウ属

広葉樹が新緑に染まり始めるころに車窓からも見える黄色い花は皆さんよくご存じのヤマブキですね。ヤマブキは木本ですが、今回のトップページの画像はヤマブキソウという草本です。ヤマブキの草本の種と思われる方も多いかもしれませんが、ヤマブキとヤマブキソウは全く別の種です。ヤマブキはバラ科ヤマブキ属ですがヤマブキソウはケシ科ヤマブキソウ属です。画像の花弁の枚数をよく観てください。ヤマブキソウの花弁は4枚で木本のヤマブキは5枚です。この枚数の違いは見分けのポイントになります。高尾山周辺で観られるフィールドは少ないかもしれません。

 

伊豆大島
伊豆大島

2023年4月   アツバスミレ  スミレ科 スミレ属

名前は知っているけどまだ出会ったことがない植物に出会えるととても嬉しいものです。アツバスミレは潮に適応できるように体を変えたスミレで、主に太平洋側の千葉県から鹿児島県まで広く分布し、伊豆七島ではシチトウスミレと同様に当たり前に見られるスミレです。

画像のアツバスミレには伊豆大島で出会いました。環境は眼下に海を臨む崖の上で一面をオオシマハイネズが覆い強風が吹きつけるような過酷なところでした。冷えて固まった溶岩の隙間にしっかりと根を下ろし、強風と照り付ける太陽光に耐えている姿がとても印象的でした。

スミレ類は世界で約800種あると言われその中で木本が約500種あるそうです。スミレ類は交雑種も多く確認されていて、まだまだ進化の途中の種なのかもしれません。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2023年3月②  コスミレ  スミレ科 スミレ属

森林インストラクター仲間でもスミレは大人気!勉強会も毎年行われているほどです。日本はスミレ大国と言えるほど種類が多く水平分布では北は北海道から沖縄まで広く分布しており、また垂直分布では亜高山帯や高山帯にも自生し北アルプスや中央アルプスでは“クモマスミレ”が見られるそうです。

その中で種小名に“japonica”がつけられているのがコスミレです。里地や都市公園でも見られるスミレで自然度の高い環境からコンクリートの隙間でも花を咲かせるとても強いスミレの一つと言えます。元気よく育つと花数を多くつけとても見応えがありますが、葉の形や花色に変異が多いため、同定に悩まされる種類とも言えます。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20233月   ヤマネコノメソウ  ユキノシタ科  ヤマネコノメソウ属

3月に入り啓蟄も過ぎ高尾山周辺では待ちに待った花の季節の到来です。もうすでにいろいろな花と出会っている方も多いとは思われますが、ヤマネコノメソウは2月の中旬頃からすでに黄色い葯をつけ始めていました。黄色い葯をつける雄しべの数は4本から8本とバラツキがありますが、4本しかないものは“ヨツシベヤマネコノメソウ”と呼ばれる変種となります。ただ咲き初めの段階で判断するのは難しいのではと思われます。この他この仲間で人気なのは白い萼と赤い葯をつけるハナネコノメで、かわいそうな名前を付けられたのはヨゴレネコノメ、ほの暗い林床に突如として現れるヨゴレネコノメはとても美しいと個人的には思います。この他ツルネコノメソウは高尾山周辺ではまだ見たことはありませんが、ネコノメソウは稀に観られると思われます。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20232月   キミノアオキ  アオキ科  アオキ属

                (旧体系:ミズキ科)

アオキは雌雄別種の常緑低木。里山、低山、都市公園とどこへ行っても見かける種類の一つではないでしょうか。

冬でも青々(緑)とした葉と遠くからでも目立つ赤い実をつけているアオキは海外でもとても人気だそうです。そんな「なーんだアオキか・・・」と思われることの多いアオキですが、今回は果実の色が赤色ではなく黄色味を帯びた“キミノアオキ”をトップページの画像に選びました。高尾山周辺ではなかなか出会えないのではと思われます。この他にもほぼ白色に近い実をつける“シロミノアオキ”という品種もあり、こちらも出会うことはめったにありません。また花の色が白緑色の“アオバナアオキ”もあり、こちらは目を凝らして探せば出会える可能性は十分にあると思われます。3月から5月にかけて花をつけますので是非探してみてはいかがでしょうか。

 

鎌倉源氏山周辺
鎌倉源氏山周辺

20231月   オオムラサキシキブ  シソ科  ムラサキシキブ属

2023年最初のトップページはオオムラサキシキブです。高尾山周辺ではまず見られない種類のムラサキシキブの仲間です。オオムラサキシキブは海から少し内陸に入った里山に自生している海岸性の変種で特徴は果実の数(花の数)が多いことと、ピントが少しぼけていますが葉先が尾状に長いのも特徴です。コムラサキも果実が多く見応えがありますが、オオムラサキシキブはドーム状に果実をいっぱいつけるのでまた違った見応えがあるのではと思います。東京近郊では神奈川県の三浦アルプスで観られます。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

202212月   ツルギキョウ  キキョウ科 ツルニンジン属

今年は高尾山の各コースでたくさんのツルギキョウの花が確認できました。関東周辺で観られるツルニンジン属は3種ありツルギキョウの他にツルニンジン(別名:ジイソブ)やバアソブが自生しています。花の形はいずれも釣り鐘型ですが大きさにはっきりとした違いがみられます。ツルニンジン(ジイソブ)の花冠の長さは25mm35mmで一番大きく、バアソブは20mm25mm、ツルギキョウは12mm前後と一番小さく探そうと思って歩いていないと見落としてしまいそうなかわいいサイズです。

さて来年はどんな植物に出会えるか・・・今から楽しみです!

 

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本年実施した観察会は日帰りが9回、宿泊が1回、延べ324名の方をご案内させていただきました。本当にたくさんの方にご参加いただきメンバー一同心から感謝申し上げております

来年も日帰りが8回、宿泊1回の合計9回の観察会を予定しています。

また来年も皆さんとご一緒できる日を楽しみしております。

 

ではよいお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします!

 

三頭山
三頭山

202211月   オオイタヤメイゲツ 

                       ムクロジ科(旧体系:カエデ科) カエデ属

今年の落葉樹の色づきは例年と比べてとても綺麗だったように思います。

カエデ類は言うに及ばず、ケヤキやシデ類の発色は特に目を見張るものがありました。トップ画像のオオイタヤメイゲツは高尾山では確認していませんが、撮影したのは三頭山です。三頭山で確認できるカエデ類は18種乃至19種と言われており、カエデを知るには良い

フィールドではないかと思われます。ただ高木になっているものが多いため直接手に触れて観察するのが難しいのが残念なところでしょうか。

交雑をしているためなのか定かではありませんが、特にカエデ類は図鑑どおりではないため同定が難しい種の一つではと思われます。このオオイタヤメイゲツも葉柄がそれほど長いとは言えない個体もありました。それが面白いところなのかもしれませんね!

 

高尾山周辺
高尾山周辺

202210月②   ニホンリス  リス科  リス属

今年は哺乳類によく出会います。森に棲む生き物たちと出会えるととても幸せな

気分になります。今回は高尾山に生息するニホンリスです。活動時間の関係もあるのか朝早くないとなかなか出会えないと言われています。食べていたのはオニグルミ、食べている場所もオニグルミの樹上です。カメラを向けても逃げ出す気配はなくゆっくりと撮影できました!体色はまだ褐色で耳毛も伸びていませんので夏毛ですね。ニホンリスは冬眠しないそうなので葉を落とした冬の森でまた出会えるかもしれません。

因みに三浦アルプスにはクリハラリス(タイワンリス)が生息していますが、こちらは外来種で樹皮を剥いで樹液を舐めるため自生のタブノキなどは悲惨な姿になっています。 

 

高尾山周辺
高尾山周辺

202210月   ユウガギク  キク科  シオン属

秋になると毎年同定に悩まされるのが野菊類とアザミ類。その中でユウガギクは比較的同定がしやすい野菊ではないかと思われます。葉の切れ込みや総苞の形はシロヨメナやノコンギクとの違いがはっきりしていると思います。

高尾山周辺
高尾山周辺

2022年9月   キツリフネ  ツリフネソウ科  ツリフネソウ属

ツリフネソウと同様に一年草のため、昨年たくさんあったのに今年は全く見なくなってしまったなんてことがよくあるかと思います。今年はそこここで確認ができ赤色と黄色のユニークな姿の花が私たちを楽しませてくれています。

キツリフネとツリフネソウの見分けは花が咲けばその色で一目瞭然ですが、葉の違いもあります。キツリフネの葉の先は鈍頭でツリフネソウの葉先は尖っていますので、花の咲く前でも見分けは比較的簡単かと思います。もう一つツリフネソウ類の熟した果実を触ると指の先でクルッと弾けることから観察会などでは大うけです!まだ触ったことがない方は是非試してみてください。

 

小山田緑地周辺
小山田緑地周辺

2022年8月   ミソハギ  ミソハギ科  ミソハギ属

ミソハギの花色はとても鮮やかで遠目からもわかります。夏の暑い時期に田んぼの畔や溜池など日当たりのよい湿った場所で色鮮やかな花を咲かせて群生しているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。

ミソハギはお盆の時期に咲くことから別名盆花や精霊花、水掛草などとも呼ばれていてお盆と関係の深い花ということがわかりますね。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20227月   イワタバコ / イワタバコ科   イワタバコ属

高尾山の蛇滝はイワタバコがたくさん咲くことで知られています。今年も観察会の下見を兼ねて観に行ってきました。石垣ではイワタバコの花が見ごろを迎え白花も確認できました。毎年観に行っているわけではありませんが、白花は行くたびに出会っていますので安定して開花しているようです。

イワタバコの新芽は山菜として食べられているそうですが、私はまだ食べたことはありません。

別名は“イワヂシャ”、岩につくレタスという意味なのでそれなりに美味しいのではないかと思われます。

5月に神奈川県東逗子の神武寺でシダの観察会を実施した折まだ花は咲いていませんでしたが、たくさんのケイワタバコの葉を確認しました。ケイワタバコはイワタバコの変種です。鎌倉界隈の寺社で観られるイワタバコはケイワタバコが多いようですので見分ける必要があるのではと思います。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20216月   ミゾホオズキ  ハエドクソウ科(旧体系:ゴマノハグサ科)

            ミゾホオズキ属

ミゾホオズキは鮮やかな黄色い花をつけます。名前のミゾは溝で、湧水などが一面に

染み出て水たまりができるような環境に生える多年草です。同じような名前がついているミゾソバなどとよく混生しています。ホオズキという名がついているのは何故なのか??その由来は花の時にはわかりません。果実を包む大きな萼がホオズキのように見えるのでその名がつきました。7月中旬ころからは花と果実の両方が楽しめますのでその姿を是非確認してみてください。 

高尾山周辺
高尾山周辺

20225月②  ホオノキ / モクレン科  モクレン属

大きな葉が遠目でも目立つホオノキは山に入る人のほとんどの方が知っている樹木の一つではないでしょうか。新緑の中でもひときわ目立ちます。そして葉と同様に大きな花をつけることでも知られています。雌しべ、雄しべの数が多く原始的な花だと言われており、雌性先熟の3日花です。また花の香りは昆虫だけではなく人も魅了されてしまうくらい甘い香りがします。高木なのでなかなか手に取るような位置で花を見ることができませんが、高尾山周辺や里山でも傾斜地や橋の脇などを探せば結構見つけることができると思います。

 

多摩市
多摩市

20225月  コケリンドウ / リンドウ科  リンドウ属

春に出会えるフデリンドウは結構見ることができますが、“コケリンドウ”は意外と観ていない花の一つではないでしょうか。その理由はその大きさです。高さは10cmほどで花冠の大きさは1~1.5㎝とフデリンドウの半分くらいの小さな小さなリンドウのため見落としてしまうからです。日当たりのよい里地の広場などでは知らないで踏みつけて歩いているかもしれませんね。

画像で見るとサイズ感がわかりませんので、フデリンドウと同じように見えてしまいますが、大きな違いは花期に根生葉がロゼット状に出ていることです。フデリンドウには根生葉がありません。

高尾山周辺にもコケリンドウは自生していますが、探すのは大変かと思います。  

 

埼玉県
埼玉県

20224月  マキノスミレ / スミレ科  スミレ属

今回のトップ画像は日本の植物学の父である牧野富太郎先生のお名前を冠したスミレ、マキノスミレです。

シハイスミレの変種で東日本に多いそうです。これは埼玉県某所でソメイヨシノが満開の時期に観たものでとても小さい、か細いスミレという印象で見つけた時は思わず声をあげてしまうほどでした。花色はシハイスミレより濃く葉は長披針形で細くほぼ垂直に近い状態でした。葉裏はシハイ(紫背)の変種ですので同様に紫色をしています。

別名は“ホソバスミレ”と呼ばれています。

余談ですが、2023年のNHKの朝ドラは牧野富太郎先生を主役にした「らんまん」に決まったそうで、長らく朝ドラは観ていなかったのですがビデオに撮りつつ最終回まで観ようと思っています。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20223月 ② ヒナスミレ / スミレ科  スミレ属

ヒナスミレはスミレのプリンセスと呼ばれている愛らしいスミレです。花期が比較的短いため綺麗な状態で出会うことが比較的難しいスミレだと思われます。

昨年同時期の観察会でヒナスミレとエイザンスミレの自然交雑種である“オクタマスミレ”と偶然出会え、その一週間後に再度訪れると何とあるはずの場所に見当たりません。場所を間違えたかと思い何度も行ったり来たりしたのですが、何と盗掘と判明。掘った後も落ち葉などを被せるなど盗掘慣れしている人の仕業ではないかと思われます。今はその場所に都レンジャーの強いメッセージ看板が立てられています。高尾山周辺は接写するために一歩前へと踏み出す踏圧や盗掘により年々草本類の個体数が減ってきています。SNSなどに画像をアップさせる際は具体的な位置は表記しないなどの注意も必要かと思います。

 

城山湖周辺
城山湖周辺

20223月 梅 輪違い  別名:思いのまま / バラ科  サクラ属

2月に小石川植物園で実施した梅の観察会では早咲きを賞梅し、中咲きは探梅を楽しんでいただきましたのでその繋がりで梅をトップ画像にしました。

見てのとおり一つの株から色違いの花を咲かせます。名前は輪違い(りんちがい)です。3月初めに訪れた皇居東御苑で青空を背景にとても美しく咲いていました。輪違いは一輪一輪花色が異なり、また吹きかけ絞り、半染め、紅白など源平のように咲き分けるので、別名「思いのまま」とも呼ばれ人々の目を楽しませてくれます。

 野梅性、小・中輪、八重咲、咲き分けの品種です。

 

城山湖周辺
城山湖周辺

20222月 セツブンソウ / キンポウゲ科  セツブンソウ属

春いち早く花を咲かせ広葉樹が葉を展開する前に結実して初夏には眠りについてしまうスプリングエフェメラル。その中でも早く眠りから覚めるのがセツブンソウです。漢字で書くと“節分草” 。名前の由来は節分のころに花をつけるからだそうですが、節分のころに花をつけるのは関東より西の温かい地域であり、関東などでは節分よりも少し遅れて咲きます。大きさは515cm、日本の固有種です。

白い花弁に見えるのは萼片で、中心寄りに見える小さな黄色い部位が実際の花弁になります。とても小さくて可憐な姿から盗掘や環境の変化により今では希少な種となっていますが、関東での自生地は埼玉県の小鹿野町と栃木県栃木市が有名だそうです。 

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20222月 ハナイカダの冬芽/ハナイカダ科(旧体系:ミズキ科)

                              ハナイカダ属

ハナイカダ、何とも興味をそそられるネーミングです。観察会でも人気の樹種ですが、葉を落とすとハナイカダということはなかなか分かりませんね。この枝の特徴はまずは触ってみることが一番わかりやすいのではと思います。枝先を軽く曲げてみてください。ゴムのようにしなやかです。だからと言って曲げすぎには注意してください。また目が慣れると枝の色合いでもわかるようになります。冬芽は見分けが難しいと思われている方も多いかと思われますが、ハナイカダは入門編です。花の無いこの時期冬芽を覚えてくると歩くことが楽しくなりますよ。

ハナイカダ、雌雄異株で花を葉の中央脈の中心辺りにつけ、雌花は花後には黒い実になります。葉を筏に黒い実を船頭に見立てて名付けられました。 

 

三浦アルプス
三浦アルプス

20221月 マサキ / ニシキギ科 ニシキギ属

寒いこの季節でも葉を落とさずに光沢のある葉をつけていますので、マサキは常緑樹とわかります。樹高は低く1.5mほどで東京近郊では家の生垣でよく見られますが、自生地は海岸に近い低山の林縁です。葉を一見するとヒサカキに似ていますが、ヒサカキは互生でマサキは対生ですので見分けは容易です。花期は6~7月、緑白色の小さな4弁花を咲かせます。果実はその年の秋に実り、仮種皮に覆われた橙赤色の種子が見られ冬でも裂開した果実が残っています。

 

奥高尾
奥高尾

202112月② ツルウメモドキ / ニシキギ科 ツルウメモドキ属

ツルウメモドキの果実は裂開すると黄色と橙色のコントラストが美しく果実つきの枝は花屋さんでも売られていて、お正月の花と一緒に飾るととても素敵です。

それほど珍しい種類ではありませんが、高所に絡まっていることが多いことと手の届くところのものは前述のこともあり持ち帰られていることが多いため見つけるのに結構苦労します。画像のツルウメモドキもかなり高いところに絡まっていました。

自生地は幅が広く北海道から沖縄までと全国で見られるそうです。開花時期は5月から6月で雌雄異株、緑色の目立たない小さな花をつけます。

 

よこやまの道
よこやまの道

2021121日 サネカズラ/マツブサ科 サネカズラ属 別名:ビナンカズラ

この季節赤い実をつける植物を探すのが楽しみの一つです。その中でも熟した艶やかな赤い実がとても美しいサネカズラは遠目からも見つけやすい実の一つではないでしょうか。 

サネカズラは別名「ビナンカズラ(美男葛)」とも呼ばれ、由来は細かく裁断した茎を水に漬けると粘液状になり、それを整髪料として使われていたことに由来し、奈良時代には普通に使われていたそうです。その他ヒビやあかぎれの外用薬としても利用されていたようです。以前狭山丘陵での観察会の折、実際に弦を裁断し水に漬けた粘液を参加された方の手に塗っていただきましたが、みなさん手がスベスベになったとの感想でした。

 

三浦アルプス
三浦アルプス

202111月② ヤマラッキョウ / ヒガンバナ科(旧体系:ユリ科) ネギ属

山に咲く辣韭(らっきょう)ですが、山に限らず里地や海岸近くの里山などにも自生します。適地はやや湿潤な草原だそうですが、画像のヤマラッキョウは三浦アルプスで撮影したもので、常緑樹の山の中の少し開けた半日陰の山道で出会った個体でしたので湿潤とは言えない環境でした。出会った時の第一印象は花の色です。このような色の自生の植物は高山でしか出会ったことがありませんので強烈なインパクトで目に焼き付いています。調べてみると、鱗茎は甘酢や酢味噌で食べられるそうで、出始めの葉は天ぷらや油炒め、

またお蕎麦の薬味にも利用されるそうです。山菜は大好物なので是非食してみたいと思っています。

白花は品種でシロバナヤマラッキョウと呼びます。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2021年11月  キッコウハグマ / キク科  モミジハグマ属

葉の形が亀の甲羅、亀甲状をしているのが名前の由来です。ハグマは中国産の牛の仲間ヤクの尾の白い毛です。ハグマは僧侶の大切な法具の払子(ほっす)や槍、刀、特に戦国時代の兜の飾りに使われ、徳川家康は特に大切にしていたそうで「家康に過ぎたるものが二つあり、唐(から)の頭(かしら)に本多平八」と敵方である武田信玄の近習に言われたほどだそうです。キッコウハグマの高さは10から30cmほどで開放花が開かないと気づかないほどです。頭花の中央に見えるのは三つの小花です。花の後ろに写っている尖ったものは蕾ですが、花が開くことがない閉鎖花になることもあり、中には全て閉鎖花という個体もあるようです。果実は痩果(そうか)で冠毛をつけ風で運ばれます。

高尾山ではこの季節よく見かける種類の一つですが、きれいな状態の開放花に会える機会は意外に少ないかもしれません。

 

三頭山周辺
三頭山周辺

202110月③

オオミヤマガマズミ / レンプクソウ科(旧体系:スイカズラ科) ガマズミ属

昨年の同時期に珍しい樹木と出会えましたので10月のトップページの画像に採用しました。オオミヤマガマズミです。オオミヤマガマズミはこの時が初見となります。

花と果実でいつも楽しませてくれているガマズミは里地里山から低山に自生し、稀に出会うミヤマガマズミも里地から山地にかけて自生します。そしてオオミヤマガマズミはミヤマガマズミの変種で山地から亜高山帯で見られ、また太平洋側に多いと言われています。画像のオオミヤマガマズミは三頭山へカエデ類を調べに行ったときに立ち寄ったビジターセンターで自生している情報を得、場所を教えていただいたおかげで赤い果実をつけている樹木をすぐに見つけることができましたが、教えていただけなければたぶんミヤマガマズミと同定していたと思います。

帰宅してからミヤマガマズミの画像と比べてみると葉の形に違いがあることが判りました。一つ目の違いは葉先が尾状に尖っていること、そして二つ目は鋸歯の数の違いです。ミヤマガマズミの鋸歯はだいたい15前後でオオミヤマガマズミの鋸歯は25前後です。この二点が同定のポイントのようですね。

奥多摩方面へ足を延ばすと高尾山周辺では見られない植物と出会えるのはとても刺激になります。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

202110月② セキヤノアキチョウジ / シソ科 ヤマハッカ属

サラシナショウマやヤマゼリ、シラネセンキュウなどと同様にセキヤノアキチョウジに出会うと深まりゆく秋を感じます。淡い青紫色の唇形の花はハイカーの目を引きます。この花と出会えることは結構あるのですがなかなか綺麗な状態の花と出会えません。

何となく江戸時代の大店の番頭さんのような名前のように思えてなりませんが、そう思うのは私だけでしょうか…

セキヤノアキチョウジは漢字で書くと“関屋の秋丁字”で、関屋は箱根の関所だそうで意としては“箱根産の秋丁字”ということになるようです。また丁字は花の形が丁字形に開くことによるそうです。

花期は9月から10月、山地の木陰に生える高さ30cmから90cmの多年草です。

日本固有種だそうで、高尾山周辺でも出会うことができます。

 

町田市周辺
町田市周辺

2021年10月

  タコノアシ/タコノアシ科(旧体系:ユキノシタ科) タコノアシ属

今回のトップページの画像は花や果実がびっしりと並んだ姿がタコの足に似ていることから、その名のとおり“タコノアシ”です。名は体を表すごとくとてもわかりやすいネーミングです。自生地は河川下流域や河口域の湿地、沼や田んぼの空き地など湿った場所を好みます。以前観たのは数年前で海岸手前の湿地でしたので、塩分にもある程度強いのかもしれません。また攪乱依存戦略と合わせて土壌シードバンクを形成するため、環境が合えば一気に繁殖することもあるそうで、少し前まではそう珍しい植物ではなかったようです。ただ今では自生できる環境が減少したことが大きな原因となりあまり見かけなくなってしまった種の一つではないかと思われます。

なお、20078月の環境省レッドリストでは、準絶滅危惧NTとされています。

花期は8月から9月で直径5mm程の花弁の無い小さな花をたくさんつける多年草です。

 

狭山湖周辺
狭山湖周辺

2021年9月②ガガイモ/キョウチクトウ科(旧体系:ガガイモ科) ガガイモ属

ガガイモはつる性の多年草で日当たりのよいやや乾燥気味の環境に自生します。画像のとおり花冠の内側に毛が密生しているのが特徴ですが、高山植物ならいざ知らず、里地のような平地のそれも日当たりのよい場所に咲くとは、私たち人間だったら夏の暑い盛りにコートを着ているようなもの、毛で覆われて暑くないのかと気になってしまいます。ホタルブクロなど花冠の内側に毛のある植物は花粉を媒介する昆虫の足掛かりの役目を果たすそうですが、ガガイモの場合も底部に蜜溜まりがあるので、媒介してもらう昆虫が口吻をうまく差し込めるよう足掛かりになっているのかもしれません。花の構造としておもしろいのは中心部に見える長い突起は雌蕊の柱頭ではなく雌蕊先端の付属体だそうで、突起基部の帽子のような作りの下に花粉塊があり、ラン科と同じような蕊柱となっているようです。

また枝を折ると白い入液状のものが出てきます。この白い汁はイボやヘビ、虫に刺された患部に塗布するとよいとされ、生薬名は羅摩子(らまし)、滋養強壮、腫れもの、解毒作用があるとのことです。

古名はカガミ、カガミグサといい、別名は“カガミイモ(鏡芋)”で、諸説ある語源の一つに果実の内側が鏡のように光ることからによるそうです。

花色が白いものは“シロバナガガイモ”と呼ばれ品種となります。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2021年9月  アカネ / アカネ科  アカネ属

アカネは山野でごく普通に見ることができるツル性の多年草で、葉は十字型に輪生して見えますが、4枚の内2枚は托葉が大きくなって葉と同じ形になったものだそうです。同科のヤエムグラ属なども葉が輪生して見えるのもこのためです。また茎を触るとわかりますが下向きの棘があり、茎や葉柄、更には葉の裏面葉脈上にも棘があり他の草などに引っ掛かりやすい体になっています。

またアカネ科の植物には有用なものが多く草本では茜色の染料で使われるアカネ、木本ではコーヒーノキやクチナシがあります。

 

八王子周辺
八王子周辺

20218月②  バアソブ / キキョウ科  ツルニンジン属

今回のトップページの画像はバアソブです。季節の会の仲間からバアソブを見つけたとの情報が入り、花期が終わる前にとにかく会いに行こうということで東京西部の某所へ雨の中行ってきました。バアソブには長年会いたいと思いつつもなかなか出会う機会がなかったため、出会えた時の喜びもひとしおでした。

バアソブは見るからに小さく、また葉の表裏には毛が多く見られツルニンジン(ジイソブ)との違いをしっかりと確認でき、また花冠の表側の色はWebや図鑑などには紫褐色のものが多く見られますが、ツルニンジン(ジイソブ)に似たものもあることを知ることができました。

今まで図鑑ででしか比較ができずにいましたが、百聞は一見に如かずですね。

 バアソブの語源は花冠の内面に紫色の斑点があり、それが老婆のそばかすに見えることからで、“ソブ”は長野県木曽地方の方言でそばかすの意だそうです。画像はまさにそばかすだらけです。

 

横沢入り周辺
横沢入り周辺

 20218月  

  ソクズ / レンプクソウ科(旧体系:スイカズラ科) ニワトコ属

奇数羽状複葉の葉だけを見ると同科同属のニワトコによく似ていますが、ニワトコは木本でソクズは草本という大きな違いがあります。また花期はニワトコが4月から5月に対してソクズは7月から8月、花のつき方にも大きな違いがあり、ニワトコが円錐型でソクズは画像のとおり散房状に集まった花をつけます。そして一番の見分けは葉の茎を触ってみることでしょうか。ニワトコには稜(りょう)がありませんが、ソクズには稜がありますので一番の見分けになると思います。小さい時期のニワトコだと木本とはいえ茎を触ってみないとわからない、なんてことが実際にありますので花期ではない時期に見ることができたら是非触ってみてください。

ソクズは野原や川沿いに生える多年草で、別名クサニワトコとも呼ばれています。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

 20217月④  シオデ / サルトリイバラ科 (旧体系:ユリ科)  シオデ属

シオデは里山や低山を歩いているとよく見かけるツル性の多年草です。雄花と雌花を別々の株につける雌雄異株で画像の花は雄花です。ツル性の植物は似たようなものが多く分かりづらいのですが、このシオデも似たものがあり同属のタチシオデやヤマガシュウ、サルトリイバラなど同定できるまでには多少時間を要するかと思います。見分けのポイントの一つは葉の形ですが、これは慣れないとちょっと難しいかもしれません。もう一つの見分けのポイントが棘で、こちらは意外と簡単かと思いますので記しておきます。まずシオデには棘がありません。ヤマガシュウの棘は先が曲がらず真っすぐです。サルトリイバラの棘は先が緩やかにカーブしています。またタチシオデは花期が5月から6月、シオデが7月から8月とシオデよりも早いので5月、6月に花をつけ、立ち上がっている“シオデ”を見つけたらタチシオデと判断できると思います。

シオデは山菜でも人気で、伸び始めの姿や食感から山の“アスパラガス”と呼ばれています。

 

箱根湿生花園
箱根湿生花園

20217月③  カキラン / ラン科  カキラン属

カキラン、漢字で書くと“柿欄”花色が柿の色に似ているところから付けられた名前だそうです。

初めて見たのは東京の南西部の田んぼで偶然出会った方にカキランが咲いていることを教えていただきその美しさに感動したことを覚えています。その昔は里地の湿地や田んぼの畔などでシュンランやエビネなどと同様にごく当たり前のように見ることができたランだったのではと思われますが、近年では森林伐採、草地や湿地の開発による減少、湿生遷移、盗掘などで多くの都道府県でレッドリストの指定を受けています。 

 

御岳山周辺
御岳山周辺

20217月② クサアジサイ

           アジサイ科 (旧体系:ユキノシタ科) クサアジサイ属

クサアジサイはやや湿った林床や岩上に自生する草本のアジサイで日本固有種です。

高尾山周辺では見かけたことがありませんので、高尾山よりももう少し標高の高い山地に自生するものと思われます。またコアジサイやヤマアジサイ、タマアジサイのように小群落をつくらずにポツンポツンと咲いているように思われます。3枚の花弁に見えるのは装飾花(萼片)で、その中央に白色から淡紅色の両性花を多数つけます。

同定の一番のポイントは葉の付き方で、アジサイ属の仲間は対生しますが、クサアジサイは互生します。ただし、私は見たことはありませんが、クサアジサイ属でも“ミヤマクサアジサイ”と “ハコネクサアジサイ”の葉は対生するそうです。

 

野川周辺
野川周辺

20217月  リョウブ / リョウブ科  リョウブ属

リョウブ、漢字で書くと“令布”です。律令時代に田畑の面積に応じてリョウブを植えさせ、葉を採取して貯蔵することを命ずる官令が発せられたことによるのが諸説ある名前の由来の一つだそうです。いわゆる飢饉の時に備える“救荒植物”だったことがわかります。また別名を“ハタツモリ”といいこちらも漢字で書くと“畑積”で畑の面積に応じて植えさせたところからきているようです。さらにもう一つの由来が花序や果実の様が“竜の尾”に見えることからリュウビが転じてリョウブとなったという説があり、個人的にはこれが一番合っているように思えるのですが皆さんはいかがでしょうか。

 

野川周辺
野川周辺

20216月③   ノビル / ヒガンバナ科(旧体系:ユリ科)  ネギ属

個人的に大好きな食べられる山野草の一つです。鱗茎がエシャロットに似ていてそのまま味噌で食べるもよし、醬油や酢に漬けたり、もちろん天ぷらも美味です。天ぷらは葉もかき揚げ風にしてもいいですね。お薦めは洗った鱗茎をみじん切りにし少し水で晒し固めの酢味噌に和えておむすびの具材としての食べ方でしょうか。

冒頭から花より団子的な話になってしまいましたが、ノビルの花、アップにすると美しい花だと気づきます。食材に使う長ネギのネギ坊主も同じ六弁(正確には6枚の花被片)の花です。花の下に見える黒く丸い塊は“球芽(むかご)”で、中には花をつけずに球芽だけという株もあり種子繁殖と栄養繁殖、さらに球根(鱗茎)の分球でも繁殖するため里地ではしばしば群生が見られます。

田んぼの畔や土手一面に自生しているノビル、まだ食べたことのないという方は是非一度試してみてはいかがでしょうか。ただ同じ科の有毒種であるスイセンやヒガンバナに葉が似ていますので採集には注意が必要で、もし迷ったら葉をつまんでみればノビルはネギの匂いがします。

ヒル(蒜)はネギ属の野菜の古称で、野に生える蒜でノビルと呼ばれるようになったのが名の由来だそうです。

 

入笠山周辺
入笠山周辺

20216月②   オサバグサ / ケシ科 オサバグサ属

この花の一番の特徴は櫛の歯状に深く裂けた葉です。まるでシダ植物のシシガシラやオサシダ、コシダのように見えます。なぜこのような形状になったのか??考えるのが楽しくなります。

この花と出会ったのは入笠山の南側に流れる渓流沿いの山道で、薄暗い法面に咲く清楚な姿に思わず魅了されてしまいました。出会った場所には小群落もあったのですが、限られたフィールドでしか自生しない希少な種のようで、名前の由来は葉の形状が機織りの“筬(おさ)”に似るところによるそうです。

亜高山の新葉樹林帯に自生する日本特産の一属一種です。 

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2021年6月   ギンレイカ/サクラソウ科  オカトラノオ属

ギンレイカ、漢字では“銀鈴花”と書きます。花弁が開平しないので一見咲いているように見えないのですが、これ以上花弁が開くことはありません。上の方についているのは蕾です。下から順に咲き上がっていくようです。

夏の終わりや秋口に高尾山を歩くと果実の頭に花柱が残ったまん丸の果実を上向きにたくさんつけた植物を見たことがある方がいらっしゃるかもしれません。それがギンレイカなのですが、花と出会ったことがまだないという方が意外に多いのではないでしょうか?

奥多摩の方には“キンレイカ(金鈴花)”が自生していますが、こちらはスイカズラ科(旧体系ではオミナエシ科)オミナエシ属ですのでまったく別の種となります。 

 

弘法山
弘法山

20215月②   コウゾリナ/キク科  コウゾリナ属

コウゾリナの頭花はタンポポと同様に管状花(筒状花)は無く舌状花だけです。この時期キク科の黄色い花には悩まされる方が多いのではないでしょうか?ニガナやハナニガナ、ノゲシやオニノゲシなど見慣れないと何が何やらわからなくなってしまいます。その中でコウゾリナは茎や葉に固い毛が生えていてザラザラしているので触るとすぐにわかります。棘のように痛いということは無いのですが、伸び始めたヒゲを逆なでするような感じです。

名前の由来は触るとザラつくことから“剃刀菜(カミソリナ)”からとか“顔剃り菜(カオソリナ)”からとも。

山地の日当たりのよい道端に生えている多年草です。 

 

長池公園
長池公園

2021年5月ヤブデマリ/レンプクソウ科(旧体系:スイカズラ科)ガマズミ属

早春から晩春にかけて黄色い花を目にすることが多かったと思いますが、スプリングエフェメラルが眠りにつき始めるころになると里地里山では白い花が目立つようになります。今回はちょうど綺麗な状態の装飾花をたくさんつけていたヤブデマリと出会えましたのでトップページの画像にしてみました。

ヤブデマリは旧体系ではガマズミやムシカリと一緒にスイカズラ科に含まれていましたが、今はレンプクソウ科の中のガマズミ属となりました。草本のレンプクソウとどこが同じなのか、、、?新体系には戸惑うばかりです。

ガマズミ属はどれも白い装飾花と赤い実をつけるので同定が少し厄介かもしれませんが、ヤブデマリの装飾花は一枚が極端に小さく不揃いなのが特徴です。中央の小さな花は両性花の集まりです。

ヤブデマリは漢字で書くと“藪手毬”で藪に生え花序が丸いからその名があり、谷沿いなど湿った林内に生える落葉低木です。

 

小宮公園
小宮公園

20214月②   キンラン / ラン科 キンラン属

新緑の雑木林の中でひときわ目立つのが里山でおなじみの美しいキンランです。キンランの花は半開きのものが多い中、今回はしっかりと花弁を広げているたくさんのキンランと出会うことができました。

キンランは里山と人が関わっていた時代にはごくありふれたランの一種だったのですが、近年では放棄された里山の影響や、その姿が美しいが故に各地で盗掘され1997年には絶滅危惧II類(VU)(環境省レッドリスト)として掲載されるまで個体数が激減してしまいました。しかしながらボランティアによる里山の手入れや保全活動が活発化し、個体数は少しずつですが増えつつあるように思われます。

キンランは地生ランの一種、ラン科キンラン属の多年草です。名前の由来は黄色の花色を金色に見立てて名づけられました。同時期には白花のギンランやササバギンランも見られますが、こちらも個体数はキンラン同様に激減しています。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2021年4月①  ヒゴスミレ(肥後菫) / スミレ科 スミレ属

早咲きのノジスミレやヒメスミレ、アオイスミレ、ナガバノスミレサインやヒナスミレの花が終わり始める頃高尾山周辺ではタカオスミレやマルバスミレなどが見ごろを迎えつつあります。

今回のトップページは高尾山周辺では比較的個体数が少ないヒゴスミレを選びました。エイザンスミレに似ていますが、葉がエイザンスミレよりさらに細かく裂けているのが大きな特徴で、自生地はどちらかというと西日本に多いようです。エイザンスミレが半日陰を好むのに対し、ヒゴスミレは日当たりのよい草原に生育するそうですので、“肥後菫”と表すように肥後の日当たりのよい草原に行くとたくさん見られるのかもしれませんね。

画像のヒゴスミレも日当たりのよい乾いた尾根筋で出会いました。前述のとおり高尾山周辺では出会うことの少ない種類ではないかと思います。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20213月  ダンコウバイ / クスノキ科 クロモジ属

桜の開花予測のニュースが流れ始める頃、高尾山周辺ではアオイスミレやヒナスミレが開花し始めます。それらと同じころに黄色い花がぽつりぽつりと見え始めるのがダンコウバイです。ダンコウバイは葉の形に特徴があるので同定しやすい樹種の一つですが、花が咲くときには葉はまだ展開しないため花だけを離れたところから見るとアブラチャンと見間違えてしまいます。同定のポイントは咲き始めがアブラチャンより少し早いことと花に柄があるかどうかが見分けのポイントになり、ダンコウバイには花柄が無く、アブラチャンには花柄がありますので近づいてみることができれば同定することができると思います。

 ダンコウバイは落葉樹林内に生える雌雄異株の低木です。  

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2021年2月  アワブキ / アワブキ科 アワブキ属

2月のトップページの画像はアワブキの褐色の毛に覆われた頂芽です。空に向かって何かをつかもうとする姿は遠目でもわかりやすいのではと思います。

冬芽には鱗状の模様が見える鱗芽(りんが)と毛で覆われた裸芽があり、アワブキの冬芽は後者の裸芽(らが)になります。他にムラサキシキブやアカメガシワ、ホンザンショウなども裸芽ですね。

ずいぶん前になりますが、森林インストラクターの先輩がアワブキと呼ばれる所以を調べようとアワブキの材を火にくべてみたところ、驚くほど泡が噴き出てきたそうです。まさに“泡吹き”だったとのこと。機会があったら是非試してみたいものです。

アワブキ科はアワブキ属の他にアオカズラ属があり26種だそうで、高尾山周辺には他に同属のミヤマハハソが自生しています。

アワブキは里山でも見ることができる樹種で、姿が美しいアオバセセリやスミナガシの食樹として知られています。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20211月  シロダモ/クスノキ科 シロダモ属

葉脈はクスノキ科特有の三行脈で葉裏はロウ質に覆われ粉白色を帯びているので同定しやすい樹種の一つだと思います。また春の若葉は垂れ下がり黄褐色の毛に覆われ触るとフワフワ!まるでウサギの耳のようです。

雌雄異株ですので画像は雌株となります。花は黄褐色で葉腋に集まり秋に咲きます。また果実は翌年の秋に結実しますので、タイミングが合えば雌株では花と実の両方を同時期に見ることができます。

樹高は10から15m

別名は葉裏が白いことから“シロタブ”とも呼ばれます。

 

同属に“イヌガシ”があるそうで、こちらは関東南部以西に自生し、花は2~3月に咲き色は暗紅色、実は当年の秋に結実しますが色は赤ではなく黒紫色とのことです。

 

奥高尾
奥高尾

202012月  メギ/メギ科 メギ属

メギ、漢字で書くと“目木”です。茎を煎じて洗眼薬に利用されていたことによります。成分はアルカロイドの一種のベルベリンで殺菌性や抗菌作用があるそうです。

メギの特徴は画像でもわかるとおり葉が退化した棘だらけです。葉の形にも特徴があり低木ですので同定は比較的容易です。秋に赤い果実をつけ果実酒として利用できるようです。

別名は棘が多いことから小鳥も止まれない“コトリトマラズ”と呼ばれ、もう一つは棘が鋭いことから“ヨロイドオシ”とも呼ばれます。個人的にはコトリトマラズと呼ぶのが好きですね。

同科同属の身近な植物としてはヒイラギナンテンがあり、同科別属ではナンテンやイカリソウなどがあります。

  

小石川植物園
小石川植物園

202011月  ケンポナシ/クロウメモドキ科 ケンポナシ属  

11月のトップページはケンポナシです。

初夏に小さな白い花が咲き、秋に小さな果実をつけます。その果実には果肉をつけず果柄部を膨らませて動物に食べさせ散布を狙うという、他にはあまり類を観ない形態をとっているのがケンポナシです。一見枝が膨らんだ“虫こぶ”と見間違えてしまいそうです。見た目はくねくね曲がって見慣れない形をしていますが、この膨らんだ部分は梨のような香りがあり甘く私たちも食べることができます。この膨らんだ果柄部とその先についている果実は強い風が吹くとそのまま地面に落下しますので、先に記したようにニホンザルやタヌキなどの動物に食べてもらい分布域を広げるという“被食型散布”の種類と言えます。

もう一つ面白いのはケンポナシの抽出物は血中アルコール濃度を低下させる作用があるとか。

またチューインガムのFLAVONOガムにはこのケンポナシの成分が入っているそうで、噛んだ後はアルコール臭の抑制効果もあるそうです。

 

ケンポナシ、北海道の一部から九州までに自生する落葉高木。英名は "Japanese raisin tree" 日本の干し葡萄と呼ばれています。

 

よこやまの道周辺
よこやまの道周辺

2020年10月 コミカンソウ/コミカンソウ科 コミカンソウ属

名前からもわかるとおり小さくしたミカンのような果実がついています。コミカンソウは畑雑草の一種で道端や畑、庭の隅に生える一年草です。畑雑草と呼ばれるわけですから里地に出ればごく当たり前のように見られたようですが、近年では見かける機会が減った種の一つかもしれません。それに対して道路の植え込みなどで目にするようになったのが同属の「ナガエミカンソウ/別名:ブラジルコミカンソウ」です。見分けは簡単でナガエは名のとおり果実に数mmの柄がついていることと、コミカンソウより大型であることです。

コミカンソウ、ナガエミカンソウとも今まではトウダイグサ科でしたが、APGではコミカンソウ科に変わっています。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2020年9月 マルバノホロシ/ナス科 ナス属

山地に生えるつる性の多年草です。赤く熟した果実が印象的な植物ですが、夏から秋にかけて咲く紫色の花もきれいです。花は開花直後は平に開いていますが、その後大きく反り返り、中央にある花柱(雌しべ)と、それを取り囲む5本の黄色い雄しべが直立しているのが目立ちます。マルバとつきますが、葉は卵状披針形で、丸くはありません。ヤマホロシがときに切れ込みのある葉を持つのに対し、こちらは全縁であるため、マルバノホロシと呼ばれているとのことです。

 

渡良瀬遊水地
渡良瀬遊水地

2020年8月 ホソバオグルマ/キク科 オグルマ属

関東以西の本州、四国、九州に生える多年草。日当たりのよい湿った草地に生育します。オグルマに似ていますが、葉が細く頭花も小さいです。湿地の減少とともに数を減らした植物のひとつで絶滅危惧Ⅱ種に指定されています。

なんでもないような小さな花ですが、盛夏にビタミンカラーの黄色い花が群生しているのを見ると元気が出ます。

 

東京町田市周辺
東京町田市周辺

2020年7月② オカトラノオ/サクラソウ科 オカトラノオ属

北海道から九州の山野の日当たりのよい場所に生える多年草です。茎がすっと一本たち、その頂に総状花序をつけます。夏、白い花が密に咲き、垂れ下がる花序の様子を虎の尾に例えてこの名があります。

このところ小さな花を接写するのがマイブームで、“トラノオ”らしくない画像となりましたが、径1cmほどの花は白い花弁に葯の薄紫がとても綺麗です。子どもの頃、花粉は黄色いものと思い込んでいたのですが、実は色彩に富んでいるのだと気づいたのはつい最近のことです。

垂れ下がった花穂も、基部から穂先へと花が咲き進むにしたがって徐々に立ち上がり、果序となる頃には上向きになります。

 

東京町田市周辺
東京町田市周辺

2020年7月① アキノタムラソウ/シソ科 アキギリ属

本州、四国、九州の山野にふつうに生える多年草です。「秋の」とつきますが、梅雨の頃から咲き始め11月頃まで花をつけます。学名はSalvia japonicaで「日本のサルビア」ですが、日本だけでなく、東アジアにも広く分布し、これまた名前どおりではありません。

花は雄性先熟で、花の咲き始めは花冠の上唇から雄しべが突き出しているのが、葯が出た後はだらりと垂れ下がり、今度は雌しべの先端が3つに開いて雌花期を迎えます。画像の4つ並んだ中央の二つが雄花期で、両端のふたつは雌花期への移行期でしょうか。雨の中に見つけた花は紫の花弁が透き通って、蝋細工のようにきれいでした。 

 

埼玉県飯能周辺
埼玉県飯能周辺

2020年6月 コアジサイ/アジサイ科 アジサイ属

関東以西の本州、四国、九州に生える落葉低木です。この花の特徴はなんといってもアジサイによく見られる装飾花がないことです。直径5mmほどの小さな両性花が散状に咲く様子はさながら金平糖が散りばめられたようです。花糸は青紫で花粉は白く、紙質の葉の上に、塩をまぶしたように花粉が落ちていることがあります。花はかすかに甘い香りがします。装飾花がない代わりに香りを出すことで花粉を運んでくれる昆虫を誘っているのです。 

 

玉川上水緑道
玉川上水緑道

2020年5月② エゴノキ/エゴノキ科 エゴノキ属

北海道から沖縄まで、日本全土に生える落葉小高木です。武蔵野の雑木林を代表する樹木のひとつとして、玉川上水沿いでもたくさんみられます。5月に玉川上水沿いを歩くと、頭上に長い花柄をもつ白い花が垂れ下がって咲いており、足元には落花の白い絨毯が広がっていて見事です。これといった特徴のない木に思えて、花や実のない時季に思いがけず野山で出会うと「何の木だろう?」と悩んでしまうのですが、ひとつの葉腋に冬芽が二つ付く、という特徴を知ってからは同定に迷うことはなくなりました。果皮にはエゴサポニンという毒成分が含まれおり、えぐみがあるためエゴノキと呼ばれます。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2020年5月 オウギカズラ/シソ科 キランソウ属

山地の木陰に生える多年草です。キランソウと同じ仲間で似ていますが、キランソウと比べると花色が淡紫色であること、毛が少ないことで見分けられます。なにより、咲いている場所が違いますね。ひっそりと暗い林内に咲いている花を見つけると嬉しくなります。名前の由来は、葉の形が扇に似ているから、また、花後に基部から地表を這う枝(走出枝)を出すのですが、それを扇形に広げるから、といわれています。

 

東京河辺市周辺
東京河辺市周辺

2020年4月 ヤマザクラ/バラ科 サクラ属

日本に自生するサクラの野生種のひとつで、宮城県以南の山地に生える落葉高木です。ソメイヨシノとは異なり、花と同時に赤褐色の新葉を展開します。白い花弁と赤い葉のコントラストが美しく、江戸時代まではお花見の桜といえば、ヤマザクラが主役でした。奈良県吉野山や、玉川上水沿いの「国指定名勝 小金井(サクラ)」に咲くのもヤマザクラです。

ところで、日本のサクラの野生種は長らく9種であったのですが、2018年に新たにクマノザクラが新種として発見され10種となりました。まだ画像でしか見たことがありませんが、自生地に咲くクマノザクラを見てみたいものです。

 

小石川植物園
小石川植物園

2020年3月 ハヤザキマンサク/マンサク科 マンサク属

北米原産のマンサクで、日本のマンサク同様早春に咲きます。「早咲き」との名前がありますが、マンサクと同じ頃に咲くようです。花は暗紫色のがく片4個にリボン状の黄色い花弁が4個、それにとても短い雄しべが4本あります。まだまだ風の冷たい早春に、マンサクの黄色い花を見つけると心がほっこりと温かくなる気持ちがします。

 

京都府立植物園
京都府立植物園

2020年2月 ムシカリ/レンプクソウ科 ガマズミ属

山地に普通に生える落葉低木です。春には白い大きな装飾花のある複散房花序の花を咲かせ、夏には赤い実が秋には黒く熟し、冬芽も特徴的な形で一年を通して楽しめる木です。名前のムシカリは虫が好んで葉を食べるから、また別名のオオカメノキは丸い葉を大きな亀の甲羅に見立てたからと言われています。この画像で、バンザイしている両手のように見えるのが葉芽、真ん中のまるい顔のように見えているのが花芽です。冬芽の面白さを最初に教えてくれたのがこの木でした。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2020年1月 ヤブコウジ/サクラソウ科 ヤブコウジ属

山地の木陰に生育する常緑小低木です。別名は十両(ジュウリョウ)。濃い緑の葉と赤い実が縁起が良いとして、センリョウ(千両)(センリョウ科)、マンリョウ(万両)(サクラソウ科)などとともにお正月には欠かせない樹木となっています。

ちなみに百両はカラタチバナ(サクラソウ科)、一両はアリドオシ(アカネ科)です。

 

文京区周辺
文京区周辺

2019年12月 キカラスウリ/ウリ科 カラスウリ属

つる性の多年草です。里山で秋に赤い実をつけるカラスウリに対して、こちらは黄色い実をつけるのでキカラスウリ。カラスウリ同様に雌雄異株で、白い花を日が暮れてから咲かせます。地下に塊根を作りますが、この塊根のデンプンが天瓜粉(てんかふん)で、かつてはベビーパウダーに使われていました。カラスウリの塊根も代用品とされました。

カラスウリの種は「打ち出の小槌」や「大黒様のお顔」になぞらえるカマキリの頭型をしていますが、キカラスウリの種はカボチャの種のような形をしています。

 

埼玉県秩父周辺
埼玉県秩父周辺

2019年11月 フユイチゴ/バラ科 キイチゴ属

宝石のように赤い実が常緑の深い緑に映えて美しいキイチゴです。夏から秋にかけて花が咲き、実は秋から冬にかけて熟します。

よく似たミヤマフユイチゴは葉先が尖っているのに対し、フユイチゴは葉先が丸いこと、また萼片の外側の毛が密生していることで見分けることができます。

 

埼玉県越生周辺
埼玉県越生周辺

2019年10月 ジョロウグモ/ジョロウグモ科 ジョロウグモ属

人家の近くから山地まで、もっともふつうにみられるクモのひとつです。ジョロウグモのクモの巣は3D構造で、真ん中に主網と呼ばれる網を張り、その前後にバリアーと呼ばれる網を張ります。

この画像を撮影した日は雨上がりで、大きく美しい網目が水滴に映えてよく見えました。中央の大きい個体がメス、右上の小さい個体がオスで、オスは交尾の後メスに食べられないように、メスが食事中のときを狙って交尾をするとか。。。交尾も命がけですね。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2019年9月 ヤマホトトギス/ユリ科ヤマホトトギス属

関東以西の山地や丘陵に生えます。山地に生えるホトトギスという意味で、ホトトギスの名は花被片の斑点を鳥のホトトギスの胸にある斑点になぞらえたものといわれています。

同様に山地に生えるヤマジノホトトギスとは花被片の反り返り具合と、花のつき方の違いで区別することができます。

花期は9月頃。この花を見ると秋が来たことを実感します。

 

インドネシア ボゴール植物園
インドネシア ボゴール植物園

2019年8月② オオオニバス/スイレン科(※)オオオニバス属

(※ハス科と表記しておりました。お詫びして訂正します。)

7月の季節の便りでは、日本に自生するオニバスの花をご紹介していますが、そのオニバスに近縁でブラジル、アマゾン流域やパラグアイ、アルゼンチンに自生する水生植物です。よく子供が乗っている画像が紹介されていますね。オニバスの花は紫色で朝開いて夜には閉じてしまうのに対し、オオオニバスの花は白い花で、夜開いて翌朝には閉じ、また夜に開き次の朝にはピンクに変色して咲き終わります。また、オニバスの葉には表にも裏にも鋭いトゲがありますが、オオオニバスは葉裏にしかトゲがありません。ですから、子供が乗ってもトゲに刺される心配はありません。

 

山梨県焼山峠周辺
山梨県焼山峠周辺

20198月  イケマ/キョウチクトウ科イケマ属  

山の林縁など陽の当たるところに生えるつる性の多年草です。

遠くから見るとまるで小さな花が集まったコデマリのような形をしていてとても目を引かれます。

花はかわいいのですが、イケマはキョウチクトウ科(以前はガガイモ科)ですのでアルカロイドを含む毒草です。傷をつけると白い液が出ますがこれももちろん有毒です。ただ毒は転じて薬草ともなり乾燥させた根は牛皮消と呼ばれ利尿、腹痛、切り傷にも効能があるそうです。

旅蝶のアサギマダラはガガイモ科のキジョランの他イケマも食草とします。

名前はアイヌ語由来でアイヌ語名もイケマだそうです。

高尾山周辺
高尾山周辺

20197月  クルマバナ/シソ科 トウバナ属  

日当たりのよい山野に自生する多年草です。一見イヌトウバナやとトウバナと見分けるのが難しいのですが、花の形、特に小苞が萼の半分以上まであることがイヌトウバナとトウバナとの違い。またクルマバナの名前のごとく花が輪状につき一段一段が離れていることで見分けることが可能かと思います。

高尾山周辺ではあまり見かけなくなった種の一つかもしれません。

奥多摩周辺
奥多摩周辺

20196月  オオバアサガラ/エゴノキ科 アサガラ属  

オオバアサガラはエゴノキの仲間、下向きの白い花を錐状に多数つけます。

高尾山周辺では自生が少なく、日影バス停近くの渓流沿いに一本自生していたのですが、土地の所有者が何らかの理由により数年前に伐採してしまい、私の知っているところでは小下沢の渓流脇に一本あるくらいでしょうか。

 奥多摩へ行けば当たり前のように自生しているのですが、どういうわけかわかりませんが高尾山周辺ではなかなか増えないように思います。

高尾山周辺
高尾山周辺

20194月  ニョイスミレ 別名:ツボスミレ/スミレ科 スミレ属  

 高尾周辺ではアオイスミレやナガバノスミレサイシンの葉が夏の葉になりつつある頃ニョイスミレは咲き始めます。適地は少し湿り気のあるところですが、陽が当たるところでも自生し、里地の小川沿いでは群落をつくることもあります。花の大きさは小さく直径1㎝前後です。

 花茎を斜上させて咲く姿はとても可愛らしく花期が比較的長いので、まだまだ楽しめるスミレです。観察会でこれは“ニョイスミレ”とお話しすると“ニオイスミレですか”?と返って来ることがあるので発音には気をつけなければならいスミレの一つです。またツボスミレとも呼ばれています。花のサイズや形は一見するとフモトスミレに似ていますが、フモトスミレは花期が早いこと、水はけのよい所に咲くなど環境が異なります。また里地や低山ではシロバナに紫色の筋が入っていますが、亜高山帯に入ると花色が淡紫色になり、こちらはミヤマツボスミレと呼ばれる変種となります。 

高尾山周辺
高尾山周辺

20193月  コチャルメルソウ/ユキノシタ科 チャルメルソウ属  

一度見たら忘れられない何ともユニークな姿の花だと思いませんか?魚の骨のようなものがぐるりとついているのがお分かりになると思いますが、これ何に見えますでしょうか?この魚の骨のようなものは花弁なんです。なぜこのような形をしているのか?自然界には“無駄が無い”と言われます。この形も当然のことながら意味があるのです。この花弁を梯子と見立てるとその答えが得られます。この花弁に足を掛けるポリネーター(送粉者)はキノコバエと言われておりこの梯子に六本の足がちょうどかかるようになっている訳です。また特定の昆虫を呼ぶ臭いも発しているそうです。巧妙ですね!

 コチャルメルソウは渓流沿いの広葉樹の林下など比較的湿潤なところに自生します。高木が葉を展開する前に花を咲かせ次々と結実させ眠りにつくスプリングエフェメラルの一つです。

名の由来は果実の形が中国のチャルメルに似ていることからその名があります。花を見ただけでは分からない名前ですね。

高尾山周辺
高尾山周辺

20192月  フキ(蕗の薹)/キク科フキ属  

山菜でお馴染のフキ、蕾の時は天ぷらで茎は佃煮風に煮つけたキャラブキなど一度は食べたことがあるのではと思います。

フキは地下茎で繋がっているため群落をつくります。また雌花をつける雌株と雄花をつける雄株がありそれぞれ花の色に違いがあります。雌花は白っぽく見え雄花は黄色っぽく見えます。

花は意外と知られていないかもしれませんね。

最近はスーパーへ行けば簡単に手に入るため、自生のフキを採って食べることが無くなってしまいました。あの独特な香りのする日本のハーブ、何だか食べたくなってきました!

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20191月  シモバシラ(氷華)/シソ科シモバシラ属  

この時期草花はまだまだ眠りについていますが、その中で白い花を咲かせる植物があります。花は花でも氷の華を咲かせるシモバシラです。冬期地上部は枯れていますが、宿根草の多年草であるシモバシラの根は生きているため水を吸い上げています。その水分が地上部の枯れた茎の裂け目から滲み出て凍るのが氷華です。この氷華、冬であればいつでも見られるわけではなく風が弱く気温が氷点下にならなければ華は咲きません。また天気がいいからこれから観に行こうかな、なんてのんびりした時間に出かけると環境によっては気温が上がり融けてしまうこともしばしば。思い立ったら早朝から出かけるくらいの意気込みで会いに行きましょう。

 因みに花と華、どちらが正しいのでしょうか?どちらを使っても良いのかな、などとも思いますが実際の花ではないので華やかさの“華”を使用しました。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

201811月  ツクバネ/ビャクダン科ツクバネ属

まだ完全に熟していない果実ですが、久しぶりにツクバネに出会いました。環境はまさに乾燥した急斜面でたわわに果実がついていました。

ツクバネは雌雄異株、落葉低木で秋が深まると淡い黄色に黄葉します。

 またスギ、ヒノキ、モミなどの針葉樹に半寄生しますが、アセビにも半寄生するそうです。そうでもしないと生きて行けない過酷な環境に身を置くことを選択したからでしょうか?いずれにしてもなかなか出会うことが少ない樹種の一つだと思います。

名前の由来はお正月につく羽根つきのつく羽根にその形が似ているからと言われているようですが、調べて行くとこの果実を手でついて遊んだのが始まりともあり、どちらが先にその名がつけられたのかどうやら定かではないような、、、、気がします。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

201810月  ムラサキセンブリ/リンドウ科センブリ属

日当たりのよい山野に生える12年草です。

名前の由来は「千振り」で千回振っても苦みが残ることからつけられた名前です。

センブリはドクダミ、ゲンノショウコと合わせて三大民間薬として広く知られています。

 昔から健胃剤として利用されてきました。

 丈は520cm、このセンブリの花弁は淡紫色で紫色の筋が入っていますのでムラサキセンブリと呼ばれ、センブリの花弁は白色に紫色の筋が入ります。

 足下に咲く小さくてかわいらしい花、是非見つけてみてください!

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20189月  レモンエゴマ/シソ科シソ属

1913年に牧野富太郎博士によって高尾山で初めて発見された植物の一つです。

茎の断面はシソ科特有の四角形です。名前の由来は葉を揉むとレモンの香りがすることと葉の形がエゴマに似ていることによります。「レモンよりレモンらしい香りがする」と言われるほどいい香りがします。この香りは果実が終わり葉や萼が枯れても香るほどです。

この葉の香りを嗅ぐと秋の深まりを感じます。次に香ってくるのはカツラの葉でしょうか!

 

入笠山
入笠山

20188月  マツムシソウ/マツムシソウ科マツムシソウ属

花の百名山、入笠山で出会った日本の固有種マツムシソウです。

高原を代表する花です。名前の由来はマツムシが鳴く頃に咲くという説と歌舞伎の呼び出しに使われる松虫鉦(まつむしがね)に花後の頭花の形が似ることによるという説があるようです。

花の色はとても涼しげな薄紫色です。標高が上がらないと見ることができない花ですが、

入笠山はゴンドラで一気に1780mまで登ることができますのでお散歩気分で出会うことができます。その他アケボノソウやキバナノヤマオダマキ、ハナイカリ、ホソバトリカブト、エゾリンドウ等々低山では見ることができないたくさんの花々に出会うことができます。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2018年6月 クマツヅラ科ムラサキシキブ属/ヤブムラサキ     (APG体系ではシソ科に分類される)

ムラサキシキブととてもよく似ていますが、画像にあるように全体に軟毛が密生しているのが大きな特徴です。葉を触るとフワフワで見つけるとついつい触りたくなってしまいます。秋になるとムラサキシキブと同様にとても上品な紫色の果実をつけます。その美しさを紫式部に例えた名前です。

葉は対生で山野に生える落葉低木です。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20185月 モクレン科モクレン属/ホオノキ

今年もホオノキの花に顔を近づけてその何とも言えない甘い香りを嗅ぐことができました。大人の手のひらほどもある大輪の花、たくさんの花弁、雌しべ、雄しべを螺旋状につけるホオノキの花は双子葉植物の中で原始的な形態を残す種類の一つと言われています。花の寿命は短く開花して一日目は雌の状態、二日目と三日目は雄の状態と形態を変え、その役目を終える“雌性先熟”の花です。花を見てどのような状態なのかを見るのも楽しいですよ。とは言え高木が故に目の前でそれを確認するのは至難の業です。近くの里山でも高尾山でも探せばきっと目の前で観ることができるホオノキと出会えるかもしれません。

 

青梅周辺
青梅周辺

 20184月 スミレ科スミレ属/マキノスミレ/別名:ホソバスミレ

 マキノスミレはシハイスミレの変種です。画像ではわかりませんが、とても小さく繊細なスミレで落ち葉に紛れている場合が多く探すのに一苦労です。葉は長披針形でほぼ垂直に立てているのが特徴で、表面は光沢があり、裏面は紫色を帯びています。距が長いのも特徴です。

 シハイスミレもこのマキノスミレもなかなか出合えることができないスミレだと思います。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20182月 クスノキ科クロモジ属/クロモジ

クロモジは雌の木と雄の木が別々の雌雄異株です。高尾山周辺ではごく普通に見られる落葉低木で、枝葉はクスノキ科特有のいい香りがします。材は高級な爪楊枝に使用されますが、枝を浸けたお酒も美味です。5月頃に葉の展開と同時に黄色い小さな花をたくさんつけます。仲間のアブラチャンやダンコウバイも同じように黄色の小さな花をたくさんつけますが、クロモジは葉の展開と同時に咲くので咲き始めの見分けは容易です。画像は冬芽です。真中が葉芽で両脇が花芽です。見た感じ何となくウルトラマンの顔に見えると思うのですが・・・

 そう思うのは私だけかもしれませんね。みなさんはどうでしょうか??

 

高尾山周辺
高尾山周辺

201710月 キク科/タカオヒゴタイ

高尾山で初めて発見された植物は60数種類ありますが、その中で“タカオ(高尾)”の名を冠した植物が11種類あります。タカオイノデ、タカオコバノガマズミ、タカオシケチシダ、タカオスゲ、タカオスミレ、タカオフウロ、タカオホオズキ、タカオホロシ、タカオヤブマオ、タカオワニグチソウ、そしてタカオヒゴタイです。一番有名なのはタカオスミレでしょうか。今年は晩夏にタカオフウロと出会えましたが、いずれも同定が難しいためもしかしたら知らず知らずに出会っているのかもしれません。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20179月 コガネグモ科/コガタコガネグモ

何だかタコのような物体が網に引っ掛かっているような、、、いえいえこれは同じ八本足でもタコではなく、雑木林の周辺や林道などの日当たりの悪い環境で垂直の正常円網を張る綺麗な柄のコガタコガネグモです。似たような仲間にはコガネグモやチュウガタコガネグモがいます。いずれのクモもX状のかくれ帯をつけているのが特徴です。かくれ帯は網の強度の調節、鳥に網を破られないようにアピールする役割などがあると言われ、その他にも威嚇説や天敵から逃れるための隠蔽説など諸説があるようです。いずれにしもてクモの身になってみないとわからない、というところなのでしょうか。クモは映画で悪者扱いにされることが多いのですが、クモは肉食のため害虫をとってくれる大切な生きものとして、昔のお百姓さんは駆除をしなかったそうで、大切な益虫なのです。私の家ではアダンソンハエトリグモがたまに出ますが、そっと手の中に包み込んでベランダに逃がしてあげます。するとベランダのプランターのコバエをとってくれます!

 

小山田緑地
小山田緑地

20179月 オミナエシ科/オミナエシ 別名/女郎花

       (APG分類体系Ⅲではスイカズラ科に分類)

オミナエシは皆さんご存じ秋の七草の一つです。万葉集に「あきののに さきたるはなを およびをり かきかぞふれば ななくさのはな はぎのはな をばなくずばな なでしこのはな をみなへしまたふじばかま あさがほのはな」と詠まれています。オミナエシは比較的背丈が高いため黄色い花が目立ち、山を歩くと遠目でもすぐにそれとわかります。オミナエシは漢字で書くと“女郎花”ですが、同じ季節に咲く“男郎花”という花もあります。こちらは“オトコエシ”と読み白い花をつけます。いずれも花はとても綺麗なのですが、別名“敗醤”(はいしょう)と呼ばれ、切り花にすると醤油が腐ったような悪臭を放ちます。花屋さんで切り花として売られているのを目にしますが、三日以上は飾らない方がいいと思います。それでも臭いを確認したいと思われる方はお試しあれ!

 

小山田緑地
小山田緑地

20178月 ミソハギ科/ミソハギ

ギンヤンマやチョウトンボ、ショウジョウトンボなどが飛び交う小さな池に流れ込む小川で穂状についているピンク色の綺麗な花が目にとまりました。ミソハギです。別名盆花(ボンバナ)、精霊花(セイレイバナ)、とも呼ばれ、ちょうどこの時期に盆棚に飾る地域もありお盆には欠かせない花だそうです。語源は漢字で書くとわかります。まずは“禊萩(ミソギハギ)”でお清めの意味があり、それが転じてミソハギになったという説。もう一つの語源は“溝萩(ミゾハギ)”で田の畔や小川など湿った土地に生えることから転じてミソハギになったという説です。

葉は披針形で規則正しく十字に対生し、群生していますので見分けやすいかと思います。

ただ仲間にエゾミソハギやメミゾハギがあり、エゾは葉をだくようにつき、メの葉の基部はくさび型で見分けのポイントになります。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20177月 ヤブコウジ科 ヤブコウジ /APG植物分類体系ではサクラソウ科に

                         含まれる。

庭木で有名なのが、万両、千両、百両、十両、一両です。ヤブコウジは何両でしょうか?答えは赤い実の数が少ないので“十両”とされています。高尾山周辺では冬のシーズン、ミヤマフユイチゴとこのヤブコウジの赤い実がハイカーの目を引きます。赤い実は良く見ますが、意外と花は見過ごしているのではないでしょうか?

 低い位置で葉に隠れるように淡いピンク色の花が下向きに咲いています。是非見つけてみてください。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20176月 ラン科 ムヨウラン

見てのとおり全体が褐色です。葉緑素を持っていないため自ら光合成ができず必要な栄養分は他からもらわなければなりません。このような植物を菌従属栄養植物(今までは腐生植物と呼ばれていました)と呼びます。葉は退化して鱗片状となっているため“無葉蘭”という名がつきました。落葉樹林下にポツンポツンと自生しているため、周囲の色と同化し目をこらさなければなかなか見つけることができません。植物に興味の無い方だったら枯れ枝にしか見えないのではと思われます。

 

北海道釧路市
北海道釧路市

20176月 

ユリ科(APG植物分類体系Ⅲではシュロソウ科)/オオバナノエンレイソウ

北海道大学の校章に使われているオオバナノエンレイソウ。確か北海道のお土産で有名な六花亭の包装紙にも使われていますね。

 高尾山周辺で観ることができるエンレイソウやミヤマエンレイソウ(シロバナエンレイソウ)とは花の形と言いその大きさも全く違うことが画像からもお分かり頂けるかと思います。出会った時あまりにもきれいなので慌ててカメラを向けると、地元の友人から「どこにでも咲いているからゆっくり撮影できるよ」と笑われてしまいました。

エンレイソウは漢字で書くと“延齢草”。花が咲くまでに10~15年もかかります。また個体そのものも30年以上生きるであろうと言われています。最初は一枚の葉だけが伸び、それを56年繰り返し、ようやく見慣れた3枚葉となり、またそれを5~6年繰り返し、やっと花を咲かせることができるのです。昨年片倉城跡で観察したカタクリも似たような生活史ですね。

高尾山周辺にはオオバナノエンレイソウは自生していませんが、仲間のエンレイソウやミヤマエンレイソウは十年前には結構見る機会がありましたが、最近はめっきり見ることが少なくなった種類の一つではないかと思います。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20175月③ スイカズラ科/オトコヨウゾメ

日当たりのよい山野に生える落葉低木です。まっ白な花と赤い花柄のコントラストが太陽の光に映えてとても鮮やかで綺麗です。秋に赤い果実をつけますが、オトコヨウゾメの果実は下垂し、仲間のガマズミやコバノガマズミは上向きに果実をつけるので見分けやすいと思います。 

高尾山周辺
高尾山周辺

20175月② スミレ科/緑花のタチツボスミレ/ミドリタチツボスミレとも呼ばれているようです。

緑花のタチツボスミレに初めて出会いました。この緑花には距が見当たらず、調べてみると緑化した花の特徴のようです。またこの株には画像のようにはっきりとした緑色の花と少し緑がかった花、形状不良の白っぽい花がついていました。このように花弁が緑色になることを“葉化”といい先祖がえりなのだそうです。また、ウィルスによる病気説などもあり、まだ完全に解明されてはおらず、ネットではタチツボスミレの一品種としての紹介もあるようですが賛否があるようです。今までキンポウゲ科のニリンソウの緑花は観たことがありますが、こちらはもともと花弁ではなく萼片ですから葉に近いわけで、緑色に先祖がえりはしやすいのかなと思われます。いずれにしても緑花に出会えたのはラッキーでした。 

高尾山周辺
高尾山周辺

20175月 スミレ科/フモトスミレ

人工林の林縁で美しいスミレを発見。フモトスミレです。このスミレは海岸近くから標高2000メートル付近の高原まで観ることができるそうです。葉の雰囲気は葉裏が紫ということもありシハイスミレに似ていて、花の雰囲気はコミヤマスミレに似ているように思います。シハイスミレは4月の半ばころまで、コミヤマスミレは5月の中旬頃からですので、フモトスミレはその中間期ですね。

高尾山周辺でもごく限られたエリアでしか観ることができないのではと思います。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20174月③ キンポウゲ科/トウゴクサバノオ 

高さは10cmほど、やや湿った場所で可愛い淡黄白色の花をつけます。花弁のように見えるのは萼片で、実際の花弁は黄色い部分です。漢字で書くと“東国鯖の尾”何をもって鯖の尾なのかと不思議に思いますが、花そのものではなく果実がカエデの果実を逆さにしたように上向きにつき、その形が鯖の尾に似ているところからその名があります。

 

山梨県某所
山梨県某所

20174月② スミレ科/イブキスミレ 

春といえばスミレ、前回に続きイブキスミレをトップ画像にしました。

花の形を一見すると何となくアオイスミレに似ていて、葉の雰囲気はタチツボスミレっぽく見えます。また柱頭の形はアオイスミレとタチツボスミレの中間、短いカギ状です。画像のイブキスミレは花期全盛の画像ですので地上茎がありませんが、花期が終わると茎をのばしますので、そういった意味でも中間的と言えるかもしれません。見分けのポイントとしては側弁に毛が密生していることと、花柄に毛が無いこと、柱頭の形でしょうか。イブキスミレは高尾山周辺には自生していません。 

高尾山周辺
高尾山周辺

20174月 スミレ科/フイリヒナスミレ 

スミレのプリンセス、ヒナスミレは母種であるフジスミレの変種で、フイリヒナスミレはそのヒナスミレの品種です。側弁に毛があるものと無いものがありますが、画像の斑入りヒナスミレは側弁に毛が無いタイプです。高尾山周辺ではそれほど珍しくはなく、この季節くまなく歩くと出会える可能性が高いのではないかと思われます。

  

高尾山周辺
高尾山周辺

2017年3月③ ユリ科/キバナノアマナ 

一時期高尾山周辺で観ることができなくなったキバナノアマナですが、保全されたこともありここ数年毎年出会えるようになって来ました。いずれにしても稀産種であることには変わりがないと思われます。“春のはかない命”のためタイミングを逃すと出会えません。これを書いているときには既に花期は終わっているかもしれませんね。 

 

高尾山周辺
高尾山周辺

 2017年3月② アブラナ科/ユリワサビ 

 今年は花が咲くのが早いという言葉をよく耳にしますが、高尾山周辺の花は少し遅いように思います。高尾山周辺の渓流沿いではハナネコノメ、コチャルメルソウ、ヤマルリソウ、そしてユリワサビなどがいち早く咲き始めます。

高さは7~20cmほど。花は綺麗な白色でアブラナ科の特徴である十字花をつけますので、見分けは難しくありません。名前に“ワサビ”とつきますが、ワサビのような辛さはまったくありません。

この先キバナノアマナやアズマイチゲ、キクザキイチゲ、ニリンソウなどが咲き始めます。山の春はあっという間に過ぎて行きます。みなさんも早春の可憐な花に会いに出かけてみてはいかがですか。

 

目黒自然教育園
目黒自然教育園

20172月 キンポウゲ科 フクジュソウ

 漢字で書くと“福寿草”、幸福の福と長寿の寿、何とも穏やかで縁起の良い名前なんでしょう。 春を待ち焦がれていた様が目に浮かぶようです。画像にあるように枯れ葉の中から他のどの花よりも早く顔を出してくれるため、「あー、もうじき春が来るんだ」とワクワクさせてくれます。

11日の誕生花、別名/元日草(カンジツソウ)と呼ばれています。

 

葛西臨海公園
葛西臨海公園

20171月 トベラ科 トベラ

トベラは海浜性の植物の中でも特に塩害に強いと言われており、海岸ギリギリにも生えます。葉は常緑で厚く縁が裏側に反っています。これは葉が乾燥することを防ぐ効果と葉の表側に付いた塩水が落ちやすいようにするための構造です。果実は熟すと画像のように裂けて光沢のある赤い実で鳥にアピールします。また赤い果実には画像でもわかるとおり粘り気があります。これはこの実を食べた鳥にくっついて遠くへ運んでもらうためです。名前の由来は枝や葉を切ると悪臭がすることから、節分に扉に挿し魔よけとしたことによりトビラの木が転じてトベラになったとのことです。5月頃に5弁の白い綺麗な花をつけます。こちらはいい香りがします。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

201612月③ クスノキ科 ヤマコウバシ

ヤマコウバシは落葉低木ですが、秋に黄葉したあと枝から葉が落ちずに翌年の春まで枝に残っているのが大きな特徴です。“なかなか落ちない”ということで最近では受験のお守りとしてその名が知られているのではと思われます。雌雄異株なのですが、日本には雌株しかないのに結実する不思議な樹木です。語源は“山香ばし”で枝や葉を折ったりちぎったりすると良い香りがすることからの名前です。ということはクスノキ科はすべて“山香ばし”ですね。冬の尾根筋を歩いている時に枯れ葉がたくさんついている木を探してみてはいかがですか?

 

葛西臨海公園
葛西臨海公園

201612月② キク科 イソギク

今回は海浜性のキク、イソギク(磯菊)をトップページの画像として選びました。丈は強い海風に耐えるため20cmから40cmほどで、葉の質は厚く、また葉の縁が白く見えるのが大きな特徴です。白く見えるのは銀白色の毛で、表側に反りぎみになっていることにより縁が白く見えるのではと思います。花は筒状花(管状花)だけで、強い日差しや乾燥にも強いため庭植えにされたりもしています。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

201612月 ユリ科(APG分類体系Ⅲではキジカクシ科)

         ジャノヒゲ/別名:リュウノヒゲ

高尾山周辺の紅葉はピークを過ぎつつあり、森の木々は冬に備え始めました。

山道に積り始めた枯れ葉を踏みしめながら歩くとジャノヒゲの鮮やかな瑠璃色の実が目にとまります。瑠璃色の球体の皮をむくと水分を含んだ果肉のようなものが出てきますが、これは果実ではなく種子です。この種子、弾力があるため堅い面に投げるとスーパーボールのようによく跳ねるため、子供たちにやらせてみると受けること間違いなしです。昔は「はずみ玉」といって実際に遊んだそうです。また、ジャノヒゲの肥大した塊根は生薬で麦門冬(ばくもんどう)と云い体に優しい咳止めとなります。私の母も良く服用していたことを覚えています。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2016年11月 キク科 ヤクシソウ 

日当たりのよい林道脇の法面でヤクシソウの群落と出会いました。花の形はハナニガに似ていて、葉が茎を抱いているのが大きな特徴です。また、茎や葉を切ると白い入液を出します。9月の下旬ころからポツリポツリと咲き始め晩秋まで花を楽しむことができますが、紅葉も進む中ヤクシソウの花期も終わりを迎えるのでは思われます。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

201610月② シソ科 ヤマハッカ

林道脇で見つけたヤマハッカの群落です。高尾山周辺では特に珍しい花ではありませんが、このような群落はなかなか見ごたえがあります。茎下部の葉には翼がありますので見分けやすいと思います。“ハッカ”という名前が付けられていますが、ミントのような香りはまったく無く、葉がミントに似ていて山に咲くという意味のなのか・・・?

この群落を見つけたコースはいずれ観察会で皆さんをご案内できればと思っています。多年草ですのでまた会えると思います。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

201610月 キク科 ユウガギク

いわゆる“野菊”です。この仲間の見分けは図鑑どおりにいかないものが多くいつも悩まされますが、ユウガギクの葉の切れ込みは他の野菊より深いため比較的見分けやすいと思います。それでも切れ込みの浅い個体もありますので、秋の清々しい風を受けながらゆっくりと野菊の観察なんていうのはいかがでしょうか。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20169月② シュウカイドウ科 シュウカイドウ

 最近高尾山周辺でもよく見かけるようになったシュウカイドウです。緑の中でピンクの花が映えるのでとても目立ちます。

葉は左右非対称、まさにベゴニア属の葉の形です。花は雌雄異花同株で、雄花は横向き気味に、雌花は下向きに咲きます。中央の下向きに咲いているのが雌花。三角錐状の子房が目立ちますので花の向きよりこちらで見分る方が簡単かと思います。この花をよく見かけるようになった理由の一つは結実した果実だけではなくムカゴでも増えるためだと思われます。

  

裏磐梯
裏磐梯

20169月 オトギリソウ科 オトギリソウ

オトギリソウは漢字で書くと“弟切草”です。ちょっと怖い名前なのですが、その言われは鷹匠の兄が鷹が傷つくと使っていた秘薬を弟が他の鷹匠に教えたことに怒り、弟を切ってしまった。その時飛び散った血痕が花や葉に黒くついたのが名前の由来だそうです。画像に黒っぽい斑が見えると思います。平安時代の伝説とは言えちょっと怖いお話ですね。

オトギリソウは特に珍しい花ではなく、山野にふつうに咲く多年草です。

 

奥多摩周辺
奥多摩周辺

20168月② キク科 ヤマハハコ

林道脇の崩落気味の崖下で白い花の塊をみつけました。ヤマハハコです。白い花弁のように見えるのは葉が変化した総苞片で中央の黄色い部分が花です。全体が白っぽい薄―いクモ毛に覆われています。根で増えるため群落をつくるようですが、私が出会った環境は崩落気味の崖下だったため、点在している程度でした。秋になるとドライフラワーのようになるので群落だと見ごたえがあるのではと思われます。名前の由来は花が春の七草のハハコグサに似ていて山地に咲くことによります。高尾山周辺でも咲いているようですが、私はまだ出会っていません。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20168月 ツユクサ科 ヤブミョウガ

ヤブミョウガは初夏の味覚であるミョウガに良く似ていますが、ヤブミョウガはツユクサ科でミョウガはショウガ科ですので全くの別種です。見た目での両者の違いは葉のつきかたにあります。両者とも葉は互生ですがヤブミョウガは放射状に葉がつき、ミョウガは二列に互生します。また花期は両者とも8月頃からですが、ヤブミョウガは画像のとおり茎の先端に白花をつけ、ミョウガは地下茎から直接地際につぼみをつけます。私達が食べているのはこのつぼみです。ヤブミョウガの果実は黒紫色で球形。薄い皮をむくとお城の石垣のように組まれた種子が見えます。一つ一つは不揃いな形なのですが見事に球体になっています。石垣造りで有名な穴太衆(あのうしゅう)も驚くのではと思うほど精密なつくりです。秋口になって熟した果実を見つけたら是非ご自分の目で確かめてみてください。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20167月② イワタバコ科 イワタバコ

高尾山周辺では蛇滝付近の群落が有名です。湿った岩壁や石垣に生える多年草で大きな葉と明るいピンクの花冠が涼しさを感じさせてくれます。花冠は多くは5裂ですが、中央の花冠は6裂しているように見えます。私が出会ったイワタバコの小群落は7月の中旬にも関わらず既に花が散り始めている個体もあり、今年の開花が早かったことを伺わせます。環境が良いと葉が30cm位にもなり名前の由来どおりタバコの葉のように見えます。

 

至仏山
至仏山

 20167月① ユリ科 オゼソウ

 今年の尾瀬は雪が少なかったことと合わせ雪解けも早かったと尾瀬ガイドの友人から聞きました。早春の草花の芽吹きも例年に比べ相当早かったようです。今回のトップ画像はユリ科のオゼソウです。尾瀬と名のつく草花は他にオゼコウホネ、オゼヌマアザミ、オゼミズギク、オゼ(ヌマ)タイゲキ、オゼトリカブトがありますが、このオゼソウは至仏山の蛇紋岩に自生する草本です。蛇紋岩はマグネシウムを多く含み、わずかながらコバルトなどの重金属が含まれているため植物が生育しにくい環境と言えます。他の植物が入ってこられない過酷な環境にあえて身を置く植物は他にもカトウハコベやタカネトウウチソウなどがありますが、このような植物は蛇紋岩残存(遺存)植物と呼ばれています。オゼソウは至仏山の他北海道の天塩山地と谷川岳に自生しています。 

 

尾瀬ヶ原
尾瀬ヶ原

20166月② アカネ科 オククルマムグラ

街の中でよく見かけるのはヤエムグラですが、こちらは同じアカネ科で深山の林下に生えるオククルマムグラです。尾瀬周辺では他に葉が6枚~10枚のクルマバソウや葉が4枚のオオバノヨツバムグラ、その他同じように葉が輪生しているユリ科のツクバネソウやクルマバツクバネソウなどを観ることができます。いずれも同じような環境に自生していますので、探しながら歩くと楽しいですよ。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

 20166月 キク科 サワギク/別名:ボロギク

 ウツギ類の白い花々が散り、ヤマボウシの花が訪れるハイカーの目を楽しませてくれています。梅雨の時期を迎え高尾山周辺の森ではキク科の草花の葉が目につくようになりました。今回は渓流沿いの林道などに咲くサワギクの黄色い可愛い花が目にとまりました。深い切れ込みの葉が印象的で一度見たら忘れない花です。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

20165月③ サトイモ科 ヒトツバテンナンショウ

高尾山周辺ではミミガタテンナンショウ、ムラサキマムシグサ、カントウマムシグサ、ウラシマソウ、カラスビシャクをよく見かけますが、ホソバテンナンショウとヒトツバテンナンショウはあまり見ることがないように思います。ヒトツバテンナンショウは大きな葉と仏炎苞の舷部の内側に濃紫色の八の字型の斑紋があるのが最大の特徴ですので、見間違えることはありません。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

 20165月② ラン科 キンラン

 里山で普通に見られる花でしたが、残念ながら近年は減ってきている種の一つではないかと思われます。本来は樹陰が適地なのですが、高尾山周辺では南斜面の日当たりのよい場所でも結構見ることができます。黄花のキンランに対して白花のギンランに出会うのも楽しみですが、キンランよりも出会う機会が少ないように思います。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

 20165月 ヒメハギ科 ヒメハギ

赤茶けた土埃が舞うような斜面で地を這うように咲いていました。

それにしても変わった姿です。鳥の羽のように見える部分は花弁ではなくがく片で、その下にさらに小さながく片が3枚あります。筒状の部分が実際の花弁で、花弁3枚が基部で合生しています。先端にあるモジャモジャしたひげ状のものは下の花弁の付属体です。花期は7月頃まで続きますので、高尾山の日当たりのよい斜面で探してみてはいかがでしょうか。

 

青梅市霞丘陵周辺
青梅市霞丘陵周辺

 20164月④ リンドウ科 フデリンドウ

 4月の「季節の便り」に投稿したメンバーからフデリンドウの群落があるとの情報を得、青梅市の霞丘陵を歩いてきました。その時撮影した画像が今回のトップページです。小さく青く見えるのは全てフデリンドウです。高尾山周辺でもフデリンドウには会えますが、ここまでの群落には出会ったことはありません。とにかく感激の一言です! 近年フデリンドウの群落は激減しているとのこと。大切にして行きたいものです。フデリンドウのフデは毛筆の“筆”からで、閉じている時の花の形が筆のように見えることからその名があります。日当たりのよい山野に生える2年草です。画像の中に筆状のつぼみがあります。探してみてください。

 

青梅市霞丘陵周辺
青梅市霞丘陵周辺

20164月③ スミレ科 スミレ(マンジュリカ)

里地のスミレ、第二段はスミレ(マンジュリカ)です。桜という桜はありませんが、スミレにはスミレというスミレがあるんです。一般的にはスミレ全般を“スミレ”と呼ぶことが多いと思われますが、ちょっとややこしくなるので、観察会などでは学名のV.mandshuricaから 【マンジュリカ】 と呼ぶようにしています。マンジュリカという学名は中国東北部(旧満州)にちなむそうです。これぞスミレ色。濃紫色の花がとても綺麗です!北海道から屋久島までと分布が広いため個体数も多く変異も激しいそうで、個人的には東京の白金でみつかった白花で紫色のすじが残った“シロガネスミレ”に出会ってみたいと思っています。

 

羽村市多摩川の土手
羽村市多摩川の土手

20164月② スミレ科 ノジスミレ

里地のスミレ、今回はノジスミレです。スミレ(マンジュリカ)と同じような環境に自生しているため、ちょっと見間違えやすいのですが、見分けのポイントは、スミレ(マンジュリカ)の葉柄にははっきりとした翼があり、ノジスミレには翼が無いことやノジスミレの花は香ること、また花の咲く時期がスミレ(マンジュリカ)より少し早いことが見分けのポイントになります。また、スミレ(マンジュリカ)の側弁は有毛ですが、ノジスミレは無毛のものが多いこともある程度ポイントになります。ただ、スミレ(マンジュリカ)には無毛の品種(ワカシュウスミレ)があり、ノジスミレにも有毛の品種(オトコノジスミレ)があるのであくまでも参考ということになります。見慣れてくると全体的にちょっとヨレヨレしているのでノジスミレだと判るようになると思います。 

 

高尾山周辺
高尾山周辺

 20164月  ケシ科 ヤマエンゴサク

 この時期に会えるのが楽しみな花の一つです。エンゴサク(延胡索)とは少し変わった名前ですが、その由来は中国の生薬、延胡索の塊茎の代用とされたことからそのまま日本語読みにされたそうです。ヤマエンゴサクは半日影の比較的湿った場所に自生し、似ているジロボウエンゴサクは日当たりのよい野原に棲み分けているように思われます。二つの花はぱっと見似ていますが、見分けのポイントは花の下部にある苞に鋸歯があるのがヤマエンゴサクです。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2016年3月 ムラサキ科 ヤマルリソウ

スプリングエフェメラルが咲きはじめる頃に、湿り気のある崩落しやすい法面などにワスレナグサに似た可愛い花を咲かせる多年草です。全体に毛が多く、花の色は水色や紫、ピンク、濃淡なども多様で希に白い花を咲かせるシロバナヤマルリソウに出合うこともあります。高尾山の一部の周辺では個体数が10年前ころに比べると減ってきているように思われます。

 

葛西臨海公園
葛西臨海公園

2016年2月 ホオジロ科 アオジ ♀

北海道や本州の山地で繁殖し、秋冬には積雪の無い低地の藪に移動します。

森林や公園の開けた草地などで、昆虫類や種子などを食べています。用心深いそうですが、結構近づいても逃げない個体と出会うことが多いように思います。大きさはスズメよりも少し大きいくらいでしょうか。チッ、チッと鋭い鳴き声で鳴くため、比較的さがしやすいと思います。

 

葛西臨海公園
葛西臨海公園

20161月 ロウバイ科 ロウバイ

多くの落葉樹の冬芽はまだしっかりとコートを羽織っている中、葉に先だっていち早く

甘い香りを放っているのは中国原産のロウバイです。花被片は光沢があり蝋質で、梅に似た花をつけることから“蝋梅”と名づけられました。花の中心部も黄色のものは同科のソシンロウバイで、ロウバイよりやや大きな花をつけます。寒い時期に花をつけるためテレビのニュースなどでよく紹介されているのを見ることがありますが、そのほとんどはボリューム感があり、華やかさのあるソシンロウバイが多いように思います。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

2015年12月②

 フウロソウ科 ゲンノショウコ/別名:ミコシグサ

 ゲンノショウコは高尾山周辺ではごくごく普通に見ることができる多年草で、センブリ、ドクダミと合わせて三大民間薬として有名です。薬箱にセイロガンがありましたら成分表にゲンノショウコ末とありますので確認してみてください。名前の由来は服用すると「現によく効く証拠」からと言われています。今回は花ではなく種を飛ばした後の果実をトップページの画像に採用しました。別名のミコシグサ(神輿草)は外側にくるっと巻いた形がお神輿の反り返った屋根に似ていることからその名があります。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

 2015年12

 バラ科 ミヤマフユイチゴ

 12月に入ると色づいた果実をたくさん見ることができます。ミヤマフユイチゴも11月頃から赤く熟し始めます。同じバラ科のキイチゴ類が初夏から夏にかけて熟すのに対し、冬に熟すことから“深山冬苺”の名がつきました。高尾山周辺ではミヤマフユイチゴを多く見かけますが、八王子城山では何故だか葉の先が丸い“フユイチゴ“を多く見かけます。

 

山頭山 
山頭山 

2015年11月②

 カエデ科 コハウチワカエデ/APG植物分類体系ではムクロジ科に含められる

 11月に入り東京の三頭山では都心に先駆けてすでに紅葉が始まっており、見ごろを迎えつつあります。今年は夏が暑かったせいか全体的に綺麗に色づいているようです。三頭山では19種のカエデを見ることができますが、イロハカエデは自生は無く全て植栽されたものが増えていったとのことです。お天気の良い日に錦繍の三頭山に出かけてみてはいかがでしょうか。



京都府下鴨神社境内
京都府下鴨神社境内

2015年11

フジバカマ/キク科  

秋の訪れを感じさせてくれるフジバカマは秋の七草の一つで、万葉のころから愛でられている花です。フジバカマは咲いている花を嗅いでもそれほど匂いを感じることはないのですが、ドライフラワーにすると桜餅のようないい香りがします。中国では香草として重用され、日本では匂い袋に使われています。適地は河川の土手などですが、河川工事によるものなのか、今はその数は激減しているようで、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧(NT)に指定されています。

 

ツマグロヒョウモン♂/タテハチョウ科

これは京都で撮影したものですが、最近ではどんどん北上し東京圏に於いては今では当たり前のように目にするチョウで、クロコノマチョウやナガサキアゲハなどと共に温暖化の影響ではないかと言われています。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

 2015年10月②

ヤマミゾソバ/タデ科 

一見同科のミゾソバのように見えますが、茎が直立していないことや全体にとげや毛が少ないこと、そして左右の裂片がくびれていないなど、よく見かけるミゾソバとの違いがわかります。ヤマミゾソバはタカオスミレやタカオヒゴタイ、レモンエゴマなどと同様に高尾山で初めて発見されて命名された植物です。

 

高尾山周辺
高尾山周辺

 2015年10月

キバナアキギリ シソ科/別名:コトジソウ 

10月に入り高尾山周辺では秋の草花が見ごろを迎えています。

今回トップページの画像に採用したのは“日本産のサルビア”、キバナアキギリです。

この花の構造はとてもユニークです。花の中央部分に見えている一対の紫色の突起物は退化した葯で、ハナバチなどが訪れた時にこの退化した葯に乗ると上唇の中に隠れている花粉を出す葯が下りてきてチョンチョンと昆虫の背中に花粉をつける仕組みになっています。画像でも隠れている葯が見えていると思います。この花を見つけたらボールペンか何かでこの退化した葯を押してみてください。上部から長い葯が下りてくることが分かります。是非試してみてください。

別名のコトジソウは、琴や筝の弦の下に立てて音の高低を調節する琴柱(ことじ)に葉の形が似ていることによります。

練馬区周辺
練馬区周辺

2015年9月③

スイフヨウ アオイ科 

白色と紅色のコントラストが綺麗な花をみつけました。スイフヨウです。この花を漢字で書くと「酔芙蓉」で咲き始めの花は白色で次第にピンク色に変化し最後は紅色になるため、お酒を飲んで赤くなる様に例えて“酔”芙蓉と名付けられました。スイフヨウは同科のフヨウの園芸品種で八重咲きです。アオイ科の仲間には南国で有名なハイビスカスや八百屋さんに並んでいるオクラがあります。場所によってはまだ綺麗な花をつけているかもしれませんので是非探してみてはいかがでしょうか。 

奥多摩周辺
奥多摩周辺

2015年9月②

ヤマナシ バラ科 

スーパーマーケットや八百屋さんには幸水や豊水など美味しそうな梨が並び始めていますが、画像の梨はそれらの原種で山に自生している梨です。我々が普段口にしている梨はみずみずしくて甘い梨ですが、こちらのヤマナシは一応梨の味はしますが、小ぶりでシャリシャリ感が強く芯の周りはかなり酸っぱくお世辞にも美味しいとは言えません。とは言え、山に住む生き物たちにとってはかなりのご馳走なのではと思います。人間が贅沢になり過ぎたのかもしれません。高尾山周辺では少ないように思いますが、奥多摩周辺では良く目にする果実ではないかと思います。


目黒区周辺
目黒区周辺

2015年9

ナンバンギセル ハマウツボ科 

ススキの地際で色鮮やかな花を咲かせているのはナンバンギセルです。ススキやミョウガ、サトウキビなどの根に寄生する1年生の寄生植物で、葉は退化して花柄の根元の方に鱗片状についています。名前の由来は安土桃山時代、南蛮人と呼ばれていたスペイン人やポルトガル人が使っていた喫煙具の煙管(キセル)に花の姿が似ていることからその名がつけられたそうです。

万葉集には俯きかげんに咲くその姿から“思い草”とうたわれていたそうで、こちらの方が趣がある名前ではないかと思います。 


高尾山周辺で撮影
高尾山周辺で撮影

2015年8月②

ツルニンジン キキョウ科 別名/ジイソブ

つる性の多年草で、鐘型の花冠の大きさは約3cmほどです。

名前の由来は根が太くその形が朝鮮人参に似ていることからきています。別名のジイソブは花冠の内側に見える紫褐色の斑点をお爺さんのソバカスにたとえてつけられ、仲間の“バアソブ”(お婆さんのソバカス)に対しての名になります。バアソブはジイソブより小型で茎葉全体に白毛が散生しています。

ジイソブは高尾山周辺では比較的よく見られますが、バアソブはあまり見かけることはないように思われます。

高尾山周辺で撮影
高尾山周辺で撮影

2015年8

キク科 オオガンクビソウ

画像を一見すると大輪の花をつけるヒマワリのように見えますが、ヒマワリと比べるとずーっと小さな花をつけるオオガンクビソウです。それでも名前の頭にオオ(大)とつくのは仲間のガンクビソウ(キバナガンクビソウ)やヒメガンクビソウ、サジガンクビソウと比べると頭花のサイズが2.5cmから3.5cmと大きく、草丈も1mほどになることによります。高尾山周辺では十年ほど前はほとんど見かけることがなかったように思いますが、ここ数年株を増やしてきた種の一つではないかと思われます。なかなか見ごたえのある花です。多年草ですので一度見つけることができればまた同じ場所で出会えるはずです。   

三頭山周辺で撮影
三頭山周辺で撮影

2015年7月③

ユキノシタ科 トリアシショウマ

高尾山周辺でこの時期似たような花をつけるのが同属のアカショウマ、チダケサシで遠目での同定はなかなか厄介な種の一つだと思います。是非近づいて花や葉の形を良く観察することをお奨めします。また秋口になるとイヌショウマやサラシナショウマが私たちの目を楽しませてくれます。こちらはショウマとつきますがユキノシタ科ではなくキンポウゲ科です。 

今年の夏は全国的に記録的な猛暑となり、その影響もあるのか例年に比べて花の咲く時期が全体的に少し早いような気がしています。皆さんはどのように感じていますか?

 

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